裏表 | ダメ子と、だぁりんと、息子ちゃん

裏表

一時、私は軽く見られる様に、バカそうに見られる様に、サバサバして見られる様に、努めてそう振る舞っていた時期があった。

実際そう在ったと思う。

ヘラヘラしていた。誰とでも絡んで話せた。誘われればsexもした。

それが私が私を守る術だったから。

そうしていれば、ココロまで犯される事は無かったから。
傷が付くのは、もうカラダだけで充分だ。

後にも先にも、あんな地獄は経験したくない。

本来の自分を、ココロを隠す事によって、誰も私に触れる事は出来ないから。

人を愛する事よりも、本音で向き合う事よりも、私は自分が傷つかない事が最優先事項になっていた。

本来の私は、物凄くネガティブで、人と関わる事すら億劫である。無意味に愛想を振りまく事もなければ、他人に興味もない。その癖、人一倍、人目や陰口に敏感だったりする。気になれば何処までも落ち込み、這い上がれなくなるのだ。

それを隠し、本心に触れさせない事によって、私は薬無しで平常を保っていた。

いつからか、それが全く出来なくなった。
原因はだぁりんである。

彼は私の武器を奪った。触れるとピリピリと痛む部分に、入り込んできた。
何度も抗ったが、彼が今居るという事は、私は負けたのだろう…
白旗大振りである。

但し、素直になってしまった私は、もう自分を守る術、武器を持たない非常によわっちい存在に成り下がる。

当然、元いた職場で平然と居られる図太さなど残っていなかった。
使い分けられる程、私は器用ではないのだ。
武器や鎧を脱いで置いて、着て持ってなどという、面倒な作業は出来ない。
だから、何かのきっかけで一度付けたり、外したりしたら、どんな場面でもそのまんまでいたいのだ。


だから私は、今その頃とは180度変わった生活を送る。

笑えちゃうのが、苦手な、むしろ嫌悪する『愛想』と『媚び』を切り売りして飯を食っている事だが。

私はとても現金な人間なので、嫌な事でもお金を貰ったり、それ相応の見返りがあれば、我ながらほれぼれする位の演技力を発揮するのだ。

人に対しては余り無いけれど、自分自身の中にこれほどまでに『裏表』を作れる自分は、もしかしたら物凄く器用なのかもしれない。