正義の味方② | ロックフェラー通りのクリスマスツリー

正義の味方②

一人寂しそうに下を向きながら帰る隆太。
校門に立っている海を見つける。



「あっ、にいちゃん」



海の元へ走って行き、抱き着く隆太。



「今日一人なのか?」



「うん、いつも一緒に帰ってる友達が風邪で休んでるの」



「そっか」



「にいちゃん、今日バイト?」



「あぁ」



「朝まで?」



「うん。今日美紀ねえちゃんも来れないんだって、だから一人だけど大丈夫か?」



「大丈夫だよ、僕もう小学生だよ」



「そっか、そうだよな」



海は隆太の頭をなでた。強がっている隆太を海はやたらかわいく見えた。






雄二は河川敷で一人で座って川に向かって石を投げている。



「雄二・・・」



後ろから美紀が来た。



「なんだよ」



美紀は無言で雄二の隣に座った。
少しの間沈黙が続いた。



美紀はようやく口を開いた。



「海の事なんだけど・・・」



「いいよあいつのことは」


「ずっと海から口止めされてたんだけど、雄二には話しておこうと思って・・・」



「なんだよ」



「海に弟がいるのは知ってるでしょう?」



「あぁ」



「その弟がね、隆太って言うんだけど、先天的な病気で年々悪化していってるの」



「えっ?」



雄二は驚いた。



「その病気を治すにはね、アメリカで手術しないといけなくて、ものすごいお金がかかるんだって。だから海は知り合いのいるコンビニに無理言って朝までバイトしてお金を貯めてるの」


「だからあいつ、あんな遅刻を・・・」



「うん、それで海の両親、飛行機事故で亡くなってるから、隆太は乗り物が怖くなってアメリカには行かないって言い始めて・・・
だから海は自分で勉強して絶対隆太の病気を治すってはりきってたんだけど、この前の検査の結果で隆太は他の患者より悪化するスピードが早いっていうのが分かって。海が医大卒業して一流の医者になるまで時間かかるじゃない?今の隆太にそんな時間の余裕は無いの。だから俺がアメリカに連れていく、自分の操縦する飛行機には乗ってくれる、そう信じて小さい頃からの夢を捨ててパイロットになろうと思ったの」



「なんで、あいつ・・・」


「雄二にその事言ったらもちろん雄二はなんかしようとするでしょ?変な気使わせたくなかったんだよ」



雄二は起き上がり、かばんを持って走り出した。