正義の味方 | ロックフェラー通りのクリスマスツリー

正義の味方

雄二と海は教室で話をしていた。
いつもテンションが高い雄二だが、今日は珍しくしんみりしている。



「もうすぐ卒業か~」



「そうだな~」



海はテンションが低い雄二に少し疑問を持っていた。でも深くは考えないようにしている。考えれば考えるだけ無駄だからだ。



「何か最後にでけーことやりてぇなぁ」



「賛成ー」



美紀がいつものように話しに混ざって来た。



「なんかねーかなー」



雄二はなんか企画しろと言わんばかりの目で海を見た。



海も最初からこうなることを予感していて、考えていた。



「別ににでかい事ではないんだけどさ、みんなで初詣に行くのはどう?」



「いいじゃん」



美紀は即答する。
もしかしたら、美紀も同じ事を考えていたのではないかと思った。



「よし決定。じゃあ今年はこのメンツで年越そうぜ」


雄二のテンションが上がっていく。
海は感じていた、
まためんどくさくなると。


「ねぇ、海。ちょっといいかな」



美紀は海を教室の外へ呼び出した。
海はなんのことか全くわからなかったが、心の中でナイスと叫んだ。
テンションが上がり始めた雄二が1番めんどくさいからだ。



「どーせ俺は独り身ですよ」



またテンションが下がる雄二。
ふと横を見ると、海の机の中から半分はみ出てる紙を発見した。



「ん・・・、なんだこれ」





美紀は海を体育館裏まで連れていく。



「なんだよ、こんな所まで」



「進路の事なんだけどね…」



「その話しはもういいんだよ、もう決めたんだ」



すると美紀の視界に遠くから、早歩きでこっちに向かって来る男が入って来た。



「雄二・・・」



雄二はさっきの紙を持って海の前に立った。



「おい海、なんだよこれ」


雄二は進路調査の紙を海に見せた。



「お前・・・なんで」



「いいから答えろよ、なんで第一志望に俺と同じ学校が書いてあんだよ」



「雄二、それはね・・・」


美紀は説明しようとするが、それを遮るように



「俺も・・・女にモテたくなったんだよ」



見え見えの嘘であった。
しかし熱くなっている雄二には嘘に聞こえなかった。


雄二は海の胸ぐらを掴んだ。



「おめー俺の夢バカにしてんのかよ」



「おめーだってたいした理由じゃねぇじゃねーか」



そう言って、海は雄二を突き放した。



雄二は立ち上がり、



「俺はそんなのぜってー許さねぇからな」



雄二はどこかに走って行った。



「海・・・」



「いいんだよ・・・これで」