「翔くん、わからずや!」
「智くんだって、頑固じゃん!」
なんで、こんなことになったのか
きっかけなんて、些細な事
どちらも意地っ張り
引くに引けなくて…
「もういいっ!」
翔くんは、そう言って部屋を出て行った
このとき、変な意地を張らなければよかった
そうすれば、こんなことにならなかったのに
俺は出て行く翔くんの姿を見ずに、乱暴にテーブルの上にあったタバコに火を点けた
「アホとしか言いようがないね」
呆れた顔をしたニノが、俺を攻めるように言う
翔くんが出て行ってから、全く連絡を取ることも、ましてや会いに行くことすらしてなくて
日にちだけがただ過ぎていき、こんなにも翔くんと会わない日があるなんてなくて
喧嘩してもすぐに仲直りしてたから、自分でどうしたらいいのか分からなくなって
落ち込みまくってる俺を見かねたニノが声を掛けてくれた
藁をもつかむ気持ちで飲みに誘い、今までのことを話せば、さっきの言葉
ニノは残り少なくなったグラスのビールを飲み干して
「さっさと謝ればいいでしょ」
「だけどさ…まさか出ていくなんてもってもないし…」
「こんな非常事態にもなって、何意地を張ってんの?」
「意地なんて…」
「あなた、最悪の事態になるよ」
「え?」
「翔さんのことだから、いつもみたいに時間が経てば元通りにするってこともしないし、ましてや自然消滅なんてこともしない。ただでさえ、あなたたちが付き合うときだって、翔さんがどんなに悩んでたか知ってるでしょ?あんなに真面目で常識人な人がね、あなたと付き合った。そんな翔さんが、今どんな気持ちになってるか、分からないわけないでしょ」
「…そうだよな」
「俺にぐちぐち言ってる暇があるなら、今すぐにでも翔さんに……」
ニノに言われているとき、俺のラインが鳴った
まさか…
そう思いながら、ニノと顔を合わせてから画面を見れば
『ごめんね
もう、智くんと付き合っていくことが出来ません
さようなら』
翔くんの言葉に、頭の中が真っ白になった