曖昧な会話と笑顔をしたまま、横山の話を聞くだけ聞いて店を出た
結構飲んだはずのアルコールがまったく効いてなくて
癖になったため息ばかりがさらに大きくなった
「もぉ…」
何の『もぉ』なのか
口から出た言葉にいらっとする
部屋に帰り、飲みなおそうかととぼとぼと歩いていると、視線の先に見覚えのある二つの背中があった
なぜかは分からないけど、俺の存在に気が付かれないように近くの電柱に身を隠した
気にならないわけはない
そっと電柱の陰から2人を覗く
少しだけ背の高い彼がもう一人の彼に耳元で何かを囁き、そして抱き合った
ああ、そうだよな
これもなぜか、かなりのショックを受け、2人から視線を外し、そこから彼らが立ち去るのを待った
時間にすれば、数分でしかないのだろう
でも何時間もそこに居たような俺の前に、一人がわざとらしくため息をついてこっちを見た
恐る恐る顔を上げると
「お兄さん、もしかしてオレのストーカー?」
「は?」
思わず出た声に驚いて口を塞ぎ、辺りを見回すと金髪の彼しかいない
「あの人ならもう帰ったよ」
「ごめん。別に後をつけてたわけじゃなくて」
「そうだったら、警察に届けるよ」
彼、カケルくんは苦笑しながらそう言う
「ほっホントだからね!」
「分かったって。で、何してんの?こんなとこで」
カケルくんは、不思議そうに聞いてきたから
「どっ同僚と近くで飲んでて…で、これから帰ろうと」
「そう。じゃ、気を付けて帰ってね」
カケルくんは俺に軽く手を振り、さっき居た方に身体を向けて歩き出そうとした時、思わずカケルくんの腕を掴んだ
「え?何?」
「あっ!え?」
互いに驚いた顔をして見合う
「あっあのさ」
「何?」
「うち、来ない?」