さっき、離された手の温かさが無くて寂しいなんて思ったはずなのに……
映画の内容?
そんなもん、分かるわけねぇーだろ
ずっとだぞ、ずっと
「やっぱり、落ち着くね」
お前はなっ!
オレは、ずっっっっっっっっっっっと
わけのわかんない緊張感がハンパなくて
周りは当然、真っ暗…いや、スクリーンからの明かりがあるから見えないわけでもないんだけど
ここに居る人達は、映画を観に来ているわけだから、オレらを気にするわけでもない
主演の俳優は、今超絶な人気のあるグループのメンバー
男のオレから見ても、かなりのイケメン
女の子達がキラキラした顔して見入っているから、他に意識なんていくわけない
これだけの条件が揃っているのに、隣に座っている男に手を握られて、ハンパない緊張とわけのわかんない恥ずかしさと
マジでオレはここに何しに来てんだよっ
映画の内容なんて、入ってこなくって
かといって、隣のやつの顔は見れなくて
またに、こそっと耳元で
すごいね
こんな感じになるんだね
なんて囁かれるたびに、身体がピクってなる
もぉーーーーーー
…今すぐここから、出たい
そんなことなんか出来るわけもなく
ドキドキと手汗を知られないように、最後までそっちに意識を持っていった