少し、動き出す?
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授業料のケーキをおごってもらい、有岡くんとはその店で別れる。
オレも相葉さんにお礼を言って帰ろうとすると。
「櫻井さん」
「はい」
「お酒、飲めます?」
なんて聞いてくるから。
「飲めますよ。好きなほうですけど?」
「じゃ、これから行けます?」
ちょっと、近所の居酒屋で飲む感じで誘ってくれるから。
「そうですね、一度戻って店を閉めてからでいいですか?まだ、張り紙したままなんですよ」
お得意様のところに行くときに、店を軽く閉めてる状態だったのできちんと戸締りだけはしたいし。
飲むなら、もうちょっと楽な恰好をしたかった。
相葉さんは、分かりました。と言って。
「俺も着替えてくるので、あとで迎えに行ってもいいですか?知り合いのとこなんですけど、櫻井さんの雰囲気に合うなぁって思って。一度、一緒に飲みたかったんです」
なんて、微笑みながら言うから。
たぶん、相葉さんに下心なんてなくて、ただ男友達と飲みに行く感覚なんだろうけど。
でも、近所の居酒屋で飲むというわけではなさそうで。。
こんなオレとしては、誘われてる感覚になってしまう。
そうじゃないんだ
相葉さんはそんな人じゃない
オレの周りにいる人とは違う
そう自分に言い聞かせて。
「分かりました。待ってますね」
と言ってオレは自分の家に向かった。
店の2階がオレの住居になっていて。店を閉めて、部屋に入りクローゼットを開ける。あまりフォーマルっぽくならないように、白い長Tに長めのニットカーディガンに黒のスリムなパンツ。
これでどうだ!
鏡の前でチェックする。
久しぶりにこんな事してる。あの人と出かける時以来じゃないだろうか。。
「友達と飲むだけなんだから」
鏡の自分に言う。
「何もないから」
当たり前だ。
相葉さんはこっちではなく、ノーマルなんだ。
って、なんでオレはそんなに相葉さんを意識してんだ?
オレは、頭を軽く振り鏡の前から離れた。
そんなことをしているうちに、相葉さんが迎えに来てくれた。
「遅くなりまして、すみません」
「いえ、全然ですよ」
相葉さんは、謝りながらオレをじっと見る。
え?なんか変?
オレは袖を掴みながら、両手を横に真っ直ぐ伸ばして。
「おかしいですか?」
って聞いたら、相葉さんはあっ!って顔して。
「ちっ違うんです!ただ…」
「ただ?」
「…なんでもないです」
「?」
あまり突っ込まないほうがいいのかと思って。
変なら変で仕方ないし。
オレは、首を少し傾けて。
「行きましょうか?」
「はい」
相葉さんは、オレとは視線を合わせずに歩き始めた。
何かおかしな事を言ったんだろうか?
少し前を歩く相葉さんの後ろ姿をオレは見つめた。
つづく