この子、好きなんです。ははは・・・
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相葉さんに連れてこられたのは、近くのファミレス。
入り口から、生徒を探せば、こちらを向いて手を振る可愛らしい少年の姿。
「あの子です」
相葉さんは手を振り返すと、オレを連れてその子が座ってる席に行く。
「ごめんね、待たせたかな?」
「いえ。先生?」
「ん?」
「誰ですか?」
少年はオレの顔を見て、不思議そうに言う。
まぁ、そうだろうな
いきなり知らないやつが付いてくれば、だいたいの人はそう思うはず。
オレは警戒されないように笑顔で。
「相葉先生の友達です」
そう言って手を差し出せば、少年は、はぁ、有岡です、と言ってオレの手を握り返してきた。
「いきなり、ついてきて、ごめんね。あの、オレはキミ達の邪魔する気ないから。相葉さん。オレ、やっぱり帰りま‥」
「あのさ、有岡くん。この人、うちで講師やってたんだって。だから、教え方上手いはずだよ」
相葉さん、いきなり何言い始めたんだ?
「ちょっと、教えてもらって」
「「はぁ?!」」
なっ何⁉︎
相葉さんは、驚いてるオレらをにこにこと見て。
「俺、理系なんですよ。で、この有岡くんも理系は得意なんですが、俺と一緒で文系が苦手で。教えてあげたいのはやまやまなんですよ。でも、今言ったみたいに俺が教えてあげるよりは、櫻井さんの方が適任かと」
ああ、なるほどね。。
「やっぱりね。先生が教えてやる。なんて言うから不思議だと思ったんだよね」
オレも同じこと思ったよ、少年。
「相葉さん、最初から巻き込むつもりだったんですね?」
2人で呆れながら相葉さんを見れば、ふふふっと笑ってる。
さっき、あんなこと言わなきゃ良かったと後悔しても遅い。
せっかく、有岡くんも教えてもらえると思ってここにきたのだから。
仕方ない。
オレは、有岡くんの隣に座り。
「どこが分かり難いのかな?」
そう言いながら、参考書をみれば、有岡くんも相葉さんに教えてもらうことを諦め。
「よろしくお願いします」
そう言って、ここなんですが。と、オレに聞いてきた。
「ああ、なるほど!」
「ここは、そんなに難しく考える必要はないんだよ」
有岡くんはのみ込み早い。
オレが教えることをすんなりと頭に入っていく。
ん?これなら、普通に教えてもらえば大丈夫なんじゃね?
ちょっと不思議に思いながら有岡くんの顔を見れば。
「何か、僕の顔についてます?」
「いや。有岡くん、キミ、ホントは文系大丈夫なんじゃない?」
有岡くんはオレに言われて、へへって笑う。
「嫌いじゃないんですよ。ただね、僕が教えてもらってる先生があんまり合わないっていうか。だから、わけが分からなくなるんです」
ああ、そういうことか。
確かに、そういこともあるな。
オレは笑って、うんうんと頷いた。
「まぁ、合う合わないってあるけど、もしわからないことがあるのなら、もう一度その先生にきいてごらん。じっくり話合えば、意外と上手くいくことあるし。おにーさんはそう思うよw」
「そうかな。僕、櫻井さんなら、合いそうなのになぁ」
「ありがとう。今日、有岡くんに教えた甲斐があったよ」
お互い笑い合ってると。
「俺もそう思うんだよね」
と相葉さんがぽつりと言う。
「え?」
「俺も今聞いててそう思ったんですよ。櫻井さん、復帰しません?」
「ははは。それ、村尾さんにも言われますよ」
「でしょ?」
「けど、仕事ありますから」
「櫻井さん、何してるんですか?」
「古本屋」
「へぇ。今度、僕、行ってもいいですか?」
「もちろん」
有岡くんは嬉しそうに、やった!って言うから、可愛いなって思う。
「すみません、櫻井さん」
「いえ、可愛いお客様が増えましたw」
「それは良かったですwで。櫻井さん、今日の授業料を」
「あっいいですよ。オレ、楽しかったし」
「そういうわけにはいきません」
「じゃ、ここのケーキおごってもらおうかな」
「え?」
「オレ、甘いの好きなんです」
「へぇ。そうなんですね」
「安すぎない?そう思うよね、先生」
「オレ、それで十分。甘いもの食べてるとき、幸せだから」
「小さい幸せだな」
有岡くんがぽつりと言うと、相葉さんが。
「有岡くん、あのさ」
小さい幸せっていうけど、それが後で大きな幸せになることがあるんだよ
ちょっと真剣な顔でそう言った。
その言葉がすごくオレの心に響いて。
オレはじっと相葉さんの顔を見つめてしまった。
つづく