夏のお祭りは、子供たちのワクワクだ。
とうとう夜まで待てなくて、日中(ひなか)に神社まで来てしまった。
まだ、骨組みしか設営されていない屋台も、これから始まるのだろう祭りの喧騒を考えるだけで、心臓がトクトクと高鳴ってくる。
「ココは、焼きとうもろこし屋さんだ!」
「あっちは、きっと綿菓子だよ!」
子供たちは、そう想像しながら、境内のぐるりを見て回る。
一人の女の子が、裏手の少し薄暗くなっている所に、一匹の黒猫が佇(たたず)んでるのを見つけた。
他の子たちは猫に気がつかずに、どんどん思い思いの場所へ散っていく。
一人だけになっても女の子は寂しくなかった。
すでに、猫に魅せられていたから。
「なんて綺麗な目なんだろう、まるで宝石みたい」
黒猫は人間に物怖(ものお)じもせず、深いコバルト色をした瞳を、こちらへ向けている。
瞳をのぞき込んでいると、さっきまで煩(うるさ)く鳴いていた蝉の声が一瞬、消えたと少女は思った。
いや、それは少女の周りのすべての音が消えていたのだ。
次にゴォーッ!という音とともに強風が吹いてきて、思わず目をつぶった。
