陳情第10号  上田市使用料等の算定に係る利用料・使用料の負担を従来どおりにする事をもとめる陳情への久保田由夫議員の討論内容

 

財政状況について

最初に、陳情の趣旨及び陳情項目を判断する前提条件である上田市の財政状況と人口動態です。

市議会では常任委員会や各会派の代表質問等で、人口動態や財政状況の現状及び今後の見通しについて、真剣な議論をしてきております。

市財政は、収入にあたる市税収入はピーク時より約10億円減っており、合併特例債の発行可能額390億円の残額は5億円余となり、地方交付税は合併後10年の保証されていた額から合併16年目では約10億円減っています

貯金にあたる基金残高は平成18年度と令和4年度比で、約109億円増やしてきました。

借金にあたる起債残高は、約135億円減らしてきましたが、これは地方交付税の特例措置(合併算定替)と合併特例債によるプラス効果が大きいと考えます。

支出では、世界情勢によりエネルギー価格の高騰に伴う公共施設の管理運営費も令和3年度と令和5年度での比較で約2億5千万円にのぼり、高止まりの中で先が見通せない状況です。

今後の見通しでは、

① 人件費増に加えて、公共施設の管理運営経費は約49億円の1.5倍かかるとされます。

② 待ったなしの課題である資源循環型施設は初期費用に約229億円が見込まれ、関連する周辺整備は上田市の責任で行う予定です。また、現在よりも減るとはいっても毎年の運営費に約7億8千万円とされており、ごみの排出量で約8割を占める上田市も相応の負担があります。

③ 上田市が設置者である公立大学法人長野大学の学部学科再編に伴うキャンパス整備費用は約60億円とされており、「未来への投資」として上田市も応分の負担をします。

④ 社会保障にかかる経費の増加ととともに少子化対策・子育て支援には、一層の財源確保が必要となります。近隣の町村で実施済みの学校給食費の無償化を上田市が単独ですすめるには毎年約7億6千万円かかると試算されています。

⑤ 10月の公表された上田市令和6年度来年度予算編成方針では、政策的経費の捻出のため1次経費(義務的経費)を一律2%カットを打ち出しています。

公共施設において「図書館法のように無料を原則とする施設」はともかく、ある分野だけを「聖域」とすることは難しく、これまでも事務事業の見直しや公共施設マネジメント基本方針にもとづいて行財政改革をにすすめてきています。

◆人口動態について

 人口動態では合併時の人口161,736 人(H18年3,31)から今年は152,986人(R5,3,31)となっており8,750人減少しました。高齢化率は令和元年11月には高齢化率が30%を超え、団塊の世代が後期高齢者となる2025年にはさらに高くなることが予想されています。

上田市では人口減少対策として子育て支援などさまざま施策を展開していますが、それでも少子化と超高齢化が確実にすすんでいるのも事実です。

◆総務委員会の取り組み(一部)

 財政部を所管する総務委員会として、市税の収納率の向上を数年にわたり改善を求めた結果、大きく改善されました。さらに、令和3年3月「収納対策の強化に向けた提言書」をまとめました。その結果、上田市債権管理条例が令和4年度から施行され、約10億円に上る自力執行権のない債権(公債権、私債権)の整理に本格的に着手しています。また、収入増に向けてネーミングライツも提言し、すでに成果が上がっています。

 さらに、総務委員会では、国に対して請願や陳情によらず、独自の判断において「地方交付税については、法定率の引き上げなど、抜本的な見直しを図ること求めるなど」地方財政の充実・強化を求める意見書を継続して提出しています。

 現在は、未利用土地の売却を含めた利活用、基金の活用などを提言するほか、指定管理制度について重点課題にして調査研究をすすめています。。

◆サントミューゼについて

 陳情にありますサントミューゼについては、現在の総務委員会、前の総務文教委員会においてサントミューゼの使用料について平成29年9月議会において総務文教分科会の附帯意見として「収支を改善する必要があるため開館3年を経過するので、事業評価を行った上で必要に応じて見直しを行うこと。」と提言し、その後使用料が改定されました。

◆市役所本庁舎改修について

 また、陳情内容にあります市役所の全面改築については、平成25年の耐震改修促進法の改正により、耐震診断を行った結果、上田市役所本庁舎が「震度6強以上の地震で『倒壊・崩壊の危険性が高い』と診断されたことにより、市が全面改築に踏み切り市議会も了承しました。ただ、事業費を抑えるため、敷地は現在地で拡張はしない、南庁舎は耐震補強にとどめ有効活用をはかりました。

◆体育施設について

 教育委員会が担当している公共施設には公民館などの他に体育施設がありますが体育施設については、平成28年12月定例会において条例改正案がだされ、「合併時より差異が生じていた体育施設使用料等について平成29年4月1日から統一」され、施設の有効利用と利用者負担の公平性が実施できました。冷暖房費についも原則利用者負担となっています。

今回の「基本方針」については、この体育施設の変更と同様で同じ上田市でもバラバラであった使用料等の算定方法の統一が主な目的であると考えています。

◆会派の代表質問について

今年3月議会の会派の代表質問でこの問題を取り上げました。

質問の趣旨は、「パブリックコメントによる公民館等の利用者から、慎重、反対の意見が多く出されていること、社会教育法第3条では、社会教育の奨励や生涯学習の振興が明記されていること踏まえた検討が必要なこと。上田市自治基本条例では、少子高齢化で増え続ける医療や介護、高齢者の見守り、環境問題とか防災対策などは、市民、市議会、市の3者した取組が必要であり、今回の「基本方針」がこれまで長年にわたり培ってきた市民協働の営みである市民力、地域力、行政力の結集を損ねるものであってはならないので、慎重に考えるべきもの」と質問し、答弁では、「今後の住民説明会を予定しており、修正すべき点は修正する」とされました。

◆丸子・武石地域における公共施設のあり方について

 私の身近では、丸子地域では三つの保育園・幼稚園を統合して「まるこ保育園」1園に集約しました。私の子どもが卒業した西内小学校は来年度から丸子中央小学校と統合します。西内保育園も閉園が予定されています。国民宿舎鹿月荘とクワハウスの廃止の方針が出さており、武石地区の雲渓荘も廃止で検討されています。

このように、人口減少・少子化への対応や市の財政の悪化を未然に防ぐ取り組みは様々な分野で進めざるを得ない状況です。

◆まとめ

 最後に、今回の「基本方針」の対象となっている施設は93施設であり管理運営費は約18億3000万円とのことで、公民館や集会施設以外も含むものです。また、「使用料等は3年間は現状のままで、施設の利用状況を正確に把握し、施設の目的と性質に基づいて利用者や団体の活動について減免適用などについて参考にしていく」との説明がありました。

 今後は、公民館や集会施設は体育施設と同様に予約時間を1時間単位に変更することで利用者の利便性の向上や利用者負担の軽減、公共施設の有効活用による利用者増について市当局に対して要求していきます。

以上、陳情の趣旨に対する背景や経過を述べたうえで、今回の市役所が出した「公の施設における考え方の策定について」は、「主な目的は、使用料などの統一した基準を設けること」であり、これまでの経過等を踏まえ上田市政の運営にとって必要なことであることをご理解していただき、陳情者および署名された方のお気持ちには添えないわけですが、以上で反対討論とします。