わたしの最愛なる人は
わたしが仕事にかまけ、お見舞いに行けないうちにどんどんガンは進行し
モルヒネすら効かない状態に…。





病院もあちこちたらい回しにされ、わたしはここで初めて医療の道を捨てた。




最愛なる人が手足の自由がきかなくなり、視神経がやられ
目が見えなくなり
二度とわたしと暮らせる日は来なかった。




それでも、彼はわたしと暮らせるものだと自分の自由がきかないのま今のうちだけだと信じていた。





わたしはそんな彼のために退院した時にと
靴と洋服をプレゼントした。





まだ彼が自宅にいるときは一緒に観光客のふりをして、あちこち周りたいねと話していた。





わたしはまだ彼の死が近い事を知るよしもなく、仕事が落ち着いたら
一緒に行こうねと言いつつも
休みがあったにも関わらず、何度もチャンスを逃がしてしまった。




今でも悔やんでならない。





彼の死がこんなにも早かったならなぜわたしは彼とデートしなかったのか
彼との時間を大切にしなかったのか
こんなわたしを彼はどう思って逝ってしまったのだろうか
わたしは最終的に危篤だと病院から知らせが来てから、眠らされた彼の手を握りしめ、握りしめ続けた。





彼の心拍が低下していくのを見ながら、涙を流しながら
何度も
よく頑張ったね。



もういいよ。

と泣きながら3時間近く言い続けていた。






ふと、彼の手がわたしの握りしめていた手からスルリと抜け落ちた。






その時、モニターは心拍0を表示し続けて
平行の線をみて、わたしはまた彼の手を握りしめ返したが
何かが変わっていた。





彼はもう逝ってしまったのに
わたしは認めれなくて認めたくなくて泣きながら何度も彼を起こそうとした。





彼はもう二度と還らぬ人となっていた。




病院はアッサリしたものだ。







医師が死亡診断に来たのは15分後。




ナースがエンジェルキットを持って来た方が早かった。




わたしは何もかも彼頼りの人生で今、こうしていても涙が止まらない。




わたしはただ生きるしかない事をつい最近悟った。





2008/07/23