暖かみを感じるなか、気づけば目的地に辿り着いていた。
真冬の離小島。
船を降りる人も、島を離れようと折り返しの船を待つ人も大勢いた。
もうすっかり夜だというのに。
さすが、観光地と言われる場所だなぁ、と彼女は心の中で呟いた。
初めて降り立つその土地に、彼女はドキドキしていた。
ほんの数時間前までは、そこへ行くのは自分だけが初めてだと思っていた彼女。
しかし、そうではなかったようだ。
彼にとっては、何度も来た事のある見知った土地だと言うのに、この島に来たのは初めてのことだと言う。
2人ともが初めての場所。
彼女は、それがとても嬉しかった。
船を降りて2人は寒さの中、歳を考える事もなく忘れ、笑って、はしゃいだ。
観光スポットに辿り着くまで、楽しくて、おもしろくて、とにかく、笑顔が止まらなかった。
『あれじゃね?』
そして先に見つけてしまった彼はそう言って指を指した。
『感動が薄れるから見ちゃダメじゃん!!』
と彼女はケラケラと笑い、彼も笑っていた。
少し先に見えたのは、想像を超えた景色だった。
もっと間近で見ようと、2人はその場所へ向かったのだった。
そしてーーーーーー、
ハッとした。
自然と2人は顔を合わせ、
微笑み、
その景色に釘付けになった。
彼女は、
彼と眺めるその景色を、目に焼き付けた。
二度とこの場所に来れないかもしれないから。
2人でこの景色を眺めるのは、最初で最後かもしれないから.....。
そして、
2人を纏う空気は変わる。
ほんの数分前までは笑いあっていたが、
今は、景色に溶け込むように静まり返っていた。
この時。
いったい2人は、何を考え、
何を想っていたのだろうか....。