一仕事を終え、もうすっかり暗い空を見上げた。
タクシーを呼び、キャリーバックと共に乗り込んだ。
向かった先はフェリー乗り場。
流れゆく景色を眺めながら、彼女は胸を躍らせていた。
その理由は何だったのか。
行ったことのない土地に行けるから?
――――それとも...。
「お客さん?着きましたよ。」
と、低い声でタクシー運転手は言う。
気が付けばフェリー乗り場の前だった。
かなりボーっとしていたようで、運転手のおじさんは首を傾げていた。
『あ、すいません。ありがとうございます。』
そう言ってメーターの金額を確認した。
『領収書をお願いします。』
と言って茶封筒からお金を取り出し、支払いを済ませた。
キャリーバックを手にタクシーを降り、フェリー乗り場の入り口に立った。
自動ドアをくぐり、辺りを見渡しながらチケット売り場に向かった。
最短時間で購入したチケットを手に。
ドキドキと胸が躍りながらも、表情には出さず。
先程目にした建物の案内掲示板に向かった。
そして、ガラガラとキャリーバックを引き釣りながらエスカレーターに乗った。
チケット売り場の一つ上の階にカフェがある事を先程の掲示板で知った彼女は、
その場所に向かったのだった。