第4回全日本ウエイト制空手道選手権大会
1987年の第4回全日本ウエイト制大会は、第4回全世界大会の最終選抜試合ということで、初めて大阪まで遠征しました。職場の格闘技好き数名とのウエイト制大会観戦も、大阪観光を兼ねて毎年の恒例行事のようになりました。
軽量級の決勝戦、緑健児×三明広幸は前年の全日本大会で敗れた緑の雪辱戦でもありました。軽量級ならではの素早い技の応酬と両者の意地と意地のぶつかり合いで見ごたえのある試合。途中互いにエキサイトしにらみ会う場面もあり、是非はともかく大いに盛り上がりました。最後は緑の勝ちたい気持ちが勝利を呼び寄せたと思いました。
三明×緑
重量級の決勝戦、七戸康博×黒澤浩樹は前年の全日本大会でまさかの飛び膝蹴り一本負けの黒澤と、これまで大阪=全日本ウエイト制大会で無敗の七戸の戦い。黒澤の強烈な下段回し蹴りに耐えて、最後に膝蹴りの猛攻で黒澤を下した七戸。大阪では負けられないという気持ちが伝わってきました。
黒澤×七戸
1990年の第7回全日本ウエイト制大会は、緑健児の復活、大山総裁の大同団結の呼び掛けにより「常勝軍団」と呼ばれた最強の他流派「正道会館」の初参戦と話題性の高い大会でした。
軽量級の決勝戦は緑健児×山本健策の対戦。「カミソリキック」と呼ばれた非常に切れのある上段回し蹴りと膝蹴りを武器に一本勝ちを含めて勝ち上がった山本。対する世界大会を見据えて復帰した緑も一本勝ちを含めて勝ち上がりました。華のある両者の戦いは本当に絵になる戦いで、後ろ回し蹴りの相打ちも二度ありました。パワーアップしたベテランの緑に一日之長があり判定勝ちとなり優勝しました。
緑×山本
山本も翌年の軽量級で優勝し、その後何度も全日本ウエイト制大会で優勝しました。
☆山本健策師範は私の師である松田伸雄総師範の後輩にあたり、試合に向けて道場で切磋琢磨された間柄です。現在はお互いの空手組織がJFKO(全日本フルコンタクト空手道連盟)に所属し、良い交流をさせていただいています。
重量級の井口勝利×角田信朗(正道会館)の戦いは今大会最高の盛り上がりとなりました。地元・兵庫のホープ井口に対して、地元・大阪の正道会館最後の砦となった角田の戦いは、館内を二分する応援の中、気持ちの伝わる好試合を展開。そして角田得意の突きを効かせて直ぐの上段回し蹴りが決り一本。角田は涙を流し拳を突き上げました。1階の前の方の席で見ていたのですが、正道会館応援団が立ちあがり狂喜し、試合場が見えなくなってしまいました。
重量級注目の一戦となった岩崎達也×柳澤聡行(正道会館)。極真次世代のホープ岩崎と極真以外の大会で数々の優勝を誇る正道会館のトップクラス柳澤の戦いは、大阪が本拠地の正道会館の応援も大きく、皆さん固唾を飲んで試合の行方を見守ったと思います。岩崎は若いながら落ち着いて戦い、接近戦からの上段回し蹴りが有効で岩崎の勝ちとなりました。
岩崎×柳澤
1991年の第8回全日本ウエイト制大会は、第5回全世界大会の最終選抜試合、昨年に続いて「正道会館」の参戦と見所満載の大会でした。
重量級の黒澤浩樹×柳澤聡行(正道会館)は両団体のチャンピオンクラスの対決で一番の盛り上がりとなりました。早くて重い黒澤の代名詞の下段回し蹴りに柳澤も膝蹴りや前蹴りで応戦。柳澤の上段前蹴りで黒澤あわやの場面もありましたが、黒澤の下段回し蹴りが的確にヒットし本戦で判定勝ち。試合後に試合場で互いの健闘を称え握手し言葉を交わす両者。会場からは大きな拍手が起こり、私ももちろん拍手をおくりました。
柳澤×黒澤
重量級準決勝の黒澤浩樹×七戸康博は四年前の再戦で、黒澤の勝利を期待する私でした。黒澤の下段回し蹴り、中段回し蹴りと七戸の正拳突き、膝蹴りが交差するも延長、再延長となるが最後に黒澤が何故か失速。実は蹴りを受けた際に運悪く受けた手の指に当たり、脱臼し骨が皮膚を突き破る大怪我をしたが、最後まで試合を捨てずに戦い続けたとの事。ここまでの諦めない心はとても常人には真似できないことです。
激闘を終えた七戸はダメージも大きかったようで、決勝で田村悦宏に技ありをとられて敗退し、大阪無敗伝説が消えました。
全日本ウエイト制大会の中から、大山倍達総裁存命時の印象的な試合をピックアップしました。第7回から9回大会は「正道会館」が大挙して出場し特に盛り上がりました。全世界大会選抜戦の第4回大会より毎年観戦するようになり、名古屋に戻ってからは大阪が近くなり行きやすくました。道場に入ってからは、道場の先輩方の応援で行くこととなり、ウエイト制大会がより身近に感じられるようになりました。
(文中敬称略)