もう5ヶ月になるんだな…。


mixiには書いたがアメブロには書いてなかったな。


残しておきたい記録なので残しておこう。


そして少し追記と編集もしておこう。












3月11日、俺は会社で普通に仕事をしていた。


いつもの通り全塗装の車のバラしをしていた。


PM14:46


揺れ始まってから緊急地震速報が鳴る。


ドアを外そうとしていたが尋常じゃない揺れ方にビビり、ドアをぶん投げて外に出る。


立ってらんねぇ。


従業員四人で肩をつかみ合い耐える。


揺れが長い。


会社の目の前の家の屋根の瓦がバタバタ崩れる。


その周りのあちこちの家の屋根や壁も次々と崩れた。


何だこれ、ヤバいな・・・と焦る。


俺は「子供達大丈夫かよ!」と叫び続けていた。


暫くしてようやく収まった。


3分くらいは揺れたはず。


工場の中を覗くと


中はグチャグチャ。


塗料が倒れ、床はシンナーまみれ。


事務所は銀河システム壊れてパソコン全滅。


最初、あ~ダメだこりゃ、ぐらいにしか思ってなかった。


新人のヅラのオッサンがパタパタして『帰りたい!』を連呼するので帰した。


子供達のところに電話を入れたが、全く繋がらない。


電話回線はもう使えないと思った。


mixiは繋がった。


Twitterはその頃、活用の仕方が分からずにいたので見もしなかった。


みんながつぶやきで生存確認をしていたので、俺も書いた。


「生きてます。でも社長帰って来ないと帰れない」と入れた。


この時点ではまだみんな無事だったはず。


「まず落ち着こう。」


と事務所に入り冷蔵庫のコーヒーを飲んで周りの動きを見ていた。


数人かな、慌てて逃げてたのは。


他の人はボク等と一緒で様子見をしていた。


少しして蒲生地区に『大津波警報』のサイレンが流れた。


それでも三人で『ここまでなんて来ないよね?』なんて話をしながら避難訓練ごっこをして遊んでいた。


バカだった。


この時社長と柴田(営業)は買い物に出ていた。


普通ならワラワラ帰って来て指示を出すはず。


先に帰ったらあの社長の事だから後で必ず文句言われるよね、なんて話をしていた。


だんだん周りがの動きが慌ただしくなる。


おふくろと子供達が気になりそわそわしていると、杉山くんと杉本っちゃんに『帰ってくださいよ。ボクら待ってますから』と言われたが、まさか自分だけ帰る訳にいかないと思い、「いいよ、俺も待つよ。4時になっても来なかったら帰るね」と社長の帰りを待つことにした。


これが大きな間違いだった。


ふと気付くと南防の通りと会社の前の道路にアッと言う間に渋滞が出来ていた。


普通じゃねー事は感じてた。


海側から逃げようとする車で渋滞は出来てるが、海側に向かう道路はガラガラだった(当たり前)


この状態ならすぐに戻れるのに、社長が帰らない。


あまりにも遅すぎる。


目の前の公園に移動し、渋滞の様子と周りの人の様子を伺った。


すると、10人いれば10人が分かるような強烈な地鳴りが。


何だ?ヤベェな…


嫌な予感がした。


ちょっと不安になったので会社に戻り、ナビのついてる車に乗り3人でテレビを見たら名取川(すぐ近くの川)が津波で大変な事に。


『ヤベーってこれ!ここも来るって!」と言ったら杉本っちゃんが


「遠藤さん!向こうから凄い人数の人がこっちに走って来ます!」


慌てて車を降りた瞬間、物凄い音が‼


『ゴォォォォォォ!」


音のする隣の公園を見ると、材木を大量に巻き込んだ真っ黒な波が、逃げる人達を飲み込みながらこっちに迫ってくる光景が目の前にあった。


「逃げろー!!」


もうね、映画だった。


今も頭から離れない。


逃げ場なんて何処にもなく、車の屋根に登る余裕しかなかった。


杉本っちゃんも車の屋根に。


杉山くんは何故か自販機の上に。


波から逃げてた人達はみんな波に飲み込まれた。


その光景を目の前で見ていた。


そして俺らも波の餌食に。


波は二手に別れた。


俺はそのまま工場の中へ流され、杉山くんと杉本っちゃんは道路に流されて行った。


波に飲まれてすぐ杉山くんの乗った自販機は倒れ、杉山くんは波に飲み込まれた。


俺は必死に屋根にしがみついた。


落ちたら終わり。


俺が乗った車は工場の中でピンボール状態に。


車やゴミや家具、電化製品などがガンガン流されてきて車にガンガンぶつかる。


振り落とされそうになるのを必死に耐えた。


工場の中の水かさは凄い勢いで増し、アッと言う間に天井に手が届く高さまで来た。


迫る天井。


ぶつかる、いや、飲まれる。


逃げ場は何処にもない。


終わった…と覚悟を決めた。


すると、奇跡が。


波のの勢いが止まり、それ以上水かさは増えなかった。


恐怖で泣きそうになった。


怖かった。


死ぬかと思った。


しかしホッとしたのも束の間。


今度は乗っていた車が沈み始めた。


ヤバい、どーする?


ふと天井を見ると、骨組みの間にクロスに細い筋交が走ってる。


これに捕まるしかない、と思うも俺の体重で大丈夫か?と不安になる。


その間もゆっくり車は沈んでいく。


覚悟を決め、落ちない事を祈りジャンプして棒にぶら下がる。


この時、作業用手袋をはめていたのが良かった。


子供達のとこに行く時に必要かもと、手袋をはめ、小さな懐中電灯をポケットに入れていたのだ。


そこから、うんていの要領で塗装ブースまでたどり着き、ブースの屋根に避難した。


必死だった。


追い込まれた時の人間のパワーって凄いと思った。


塗装ブースの屋根を伝って工場の一番奥まで行き、壁に張り付いて余震に耐えた。


第二波が来たらそん時は終わり。


正直怖かった。


天窓があったので外の様子を見てみた。


外は巨大な川になっていて、追い討ちをかけるように雪が降り吹雪いていた。


自然の怖さを思い知らされた。


杉本っちゃんと杉山くんがどうなったかも気になったが、正直もう死んでるよな…と思っていた。


どうやってここから脱出するかを考えた。


とりあえず水が引くのを待つしかない。


それしか出来ない。


恐怖でいっぱいだった


待ってる間、何分かおきにくる震度4,5クラスの余震。


心が何度も折れた。


生きて帰れないかもな…と思い、おふくろに『ゴメン。無理。お先』とメールを打つ。


しかし、電波が悪くて送信すら出来なかった。


何で俺らがこんな目に合わなきゃないんだ?と考えていた。


何故か社長を恨んでいた。


雪は小降りになり、だんだんと暗くなってきて初めて気付いた事があった。


小窓がオレンジ色に照らされていて何か煙いなと思ったら、会社の裏の家が燃えていた。


その煙りが少しずつ工場の中に入って来る。


風も出ていて風下にうちの会社があった為、また嫌な予感がする。


まぁここには移らないよな…


甘かった。


しばらくすると会社の隣のアパートに引火し、そして間もなく工場に火が。


煙りの量がハンパなく、工場の中は煙りで充満していた。


このままじゃ一酸化炭素中毒になると思い、脱出することに。


幸い、水も大分引いていた。


壁の鉄骨を伝って入り口付近まで行き、下に降りたら膝くらいの水位だった。


イケる!


そう思った。


携帯を左手に


デジカメとipodを右手に


ライトを口にくわえて脱出。


水がかなり冷たかった。


会社の敷地内までは良かった。


敷地を出たとたん一気に水位が上がり、胸の辺りまで来た。


甘かった。


しかも潮は引き潮。


逆流の中高台を目指し歩いた。


一歩一歩の足取りが重い。


気を抜くと潮の流れに持って行かれる。


ゴミも多かったが一番邪魔だったのがビールの樽だ。


すぐ近くのキリンビールの工場も津波に飲まれ、工場の中の缶ビールと樽が辺り一面に散らばり流されていた。


量が半端じゃない。


流れがキツくて避けようがなく、何度も腹や胸にぶつかった。


何気に痛い。


家事になった家を横目に歩いてると、家の中から声が。


『おぃ!アンタ!助けてくれー!あっついー!』


よく見ると中に人影があった。


無理だよ…行けねーよ…


申し訳ないと思いながら『ゴメン!無理!』と言って先へ進んだ。


「頼む!行かねーでくれ!戻って来てよ!あっついー!」


姿が見えなくなるまで同じ台詞を何度も言われた。


今でも耳に残ってる。


忘れられない。


自分を優先した。


見殺しにしたも同然だ。


涙が出て止まらなかった。





ひたすら水の引いた高台まで歩いた。


ところどころで死体を見た。


流れてくる死体や死体で道が塞がれてるとこもあった。


20分くらい歩いただろうか。


ようやく高台に上がり脱出した。


クタクタになった。


とにかく寒かった。


『家に帰ろう』


それしか頭に浮かばなかった。





すぐ目の前にコンビニがあった。


この際関係ねーと思い、中に入ったら先客がいて「俺もいいッスか?」と言うと、「どーぞどーぞ」と。


タオルとタバコ、おにぎりと水と充電器を入手。


おにぎりを食べ、水を飲み少し落ち着く。


一服をしてよくよく周りを見渡した。


唖然とした。


津波で崩壊した建物の数々。


原爆が落ちたかのような凄まじい火災。


無数のひっくり返った車の残骸。


大量のビールと洗剤。


無残に転がる死体。


地獄絵図。


日本最悪の日。


まさにその通りだった。







歩いて自宅へ向かった。


しかし、寒くて震えが止まらない。


このままじゃ歩けないと思い悩んでいると、焚火をしている人達がいた。


そこまで行き、まず服を乾かした。


汚水と海水、ガソリン灯油、様々なものが混ざった水に浸かったのでかなり臭かった。


火に当たってる間服を乾かした後、また歩き始めるがやはり寒い。


自宅までもたない。


すると明かりが見えて人影が見えた。


迷わずそこに向かい、『少し休ませてください』と言うと、状況を察したのか『事務所に入って暖まれ!』と


ここで一晩お世話になりました。


「(株)太田ガス」さん。


一生忘れられない恩が出来た。





夜中2時頃に電話が鳴った。


地震の後、初めて鳴った電話だった。


見ると…「杉本拓也」と。


奇跡的に助かりましたと。


泣いていた。


道路に流された後、偶然民家の屋根に引っ掛かり、屋根に飛び移り2階にいた旦那さんに助けてもらったとの事。


俺の居場所を教えて、数十分後に無事合流。


抱き合って二人で泣きました。


一人で香川から出て来てもし何かあったら、親に顔向け出来ないと思っていた。


怪我も無く大丈夫だったので、杉山くんの行方を聞いた。


途中まで一緒に流されたが自販機から落ちたと。


その後は分からない…


その話を聞いて正直俺は諦めた。


あの流れの中、生き残るのは無理だと思ったからだ。


流された当人にしか分からない。


無理。


でも、杉本っちゃんと『明日探しに行こう』と約束した。


結局その日は一睡も出来なかった。






3月12日朝5時50分。


日の出と共に会社へ向かった。


ユカ(杉山くんの彼女)も一緒について来た。


会社の辺りはまだ煙りが上がっていた。


危険は承知だ。


辺り一面に転がるビールや木材を避けながら進む。


本当に酷い有様だった。


会社に着き、変わり果てた姿を見て寒気がした。


よく生きてたな…と改めて実感。


早速杉山くんを探す。


が、瓦礫やゴミが道を塞いで歩くのさえままならなかった。


三人で手分けして探すことに。


火事になった家を覗いたら、黒い人影が見えた。


助けを求めた人だろう。


近くまで行き、「すみませんでした」と謝った。


逃げたしたい気持ちを抑えて、また探しに出た。


死体が何体もあった。


2時間くらい探しただろうか。


まだ水が引かないとこや、家が崩れて進めない場所以外はすべて調べた。


が、何処にも居なかった。


荒浜に遺体が200~300揚がったとの話を聞いていたので、行ってみようと。


しかし俺は自分の車が流されてしまったので足がない。


社長の車を借りに社長宅へ行った。


寝ている社長を叩き起こし、車を借りる。


一つだけ質問した。


『地震の後どーしたんですか?』と聞くと


『津波来るー聞いたけぇ、柴田と二人で街中に逃げたわ』


待たなきゃ良かった。


杉山くん…


何も言わずにそのまま立ち去り自宅に帰った。


自宅に戻るとおふくろはおらず、なら避難所かなと思い、近くの小学校へ行った。


しばらく探してようやくおふくろ発見。


おふくろに会ったらワンワン声を出して泣かれた。


俺と一切連絡取れないし、ラジオで蒲生地区が津波で全滅したと聞いて俺は死んだ思っていたらしい。


久々におふくろに泣かれた。


胸が苦しくなってこっちまで泣きそうになった。


それから家に帰り、シャワーを浴びた。


水のね。


ガスも電気も止まってたから水しか出ない。


地獄だった。


もう二度と経験したくない。


その後3日間杉山くんを探し続けたが見つからなかった。


諦めかけた4日目。


ユカから電話が入り「杉山さん自力で家まで帰って来ました!」と。


自販機に乗っかり流され
自販機が倒れて波に飲まれ
やっと何かにぶつかって止まったと思ったら流れて来た物置とトラックに挟まれ
水の中で何分かもがき苦しみ
やっとの思いで脱出し、また流され
片腕一本で泳ぎアパートに避難
アパートの窓ガラスをぶっ壊して部屋に侵入
そこで一晩過ごし、翌朝自衛隊に助けられて自衛隊病院に搬送されたとのこと


左鎖骨骨折と左ろっ骨4本骨折と左半身打撲


よく生きてたもんだ。


未だに治ってないが元気にやってます。







復興にはまだまだ時間がかかるだろう。


やれる事を少しずつこなしていくしかない。


俺が一番願うのは、宮城県民の「温度差」が一刻も早く消えてくれる事。


難しいし無理なんだろうが、これが解消されればもっと復興は早いはず。


願うしかない。


俺らはいいが子供らの未来を何とかしないと。


これからだ。


まだ何も始まってない。


頑張ろう。