先日、創元社『核兵器』(ジョセフ・M・シラキューサ 著、栗田真広 訳)を読み終えたのでその読書感想文である。と言っても一度読んだだけなので大した感想は言えないがこうやって何か書かないと即忘れるのでメモがてら。

 

この本の立ち位置だが核兵器誕生の前日譚からトランプ政権までの米国とソ連・ロシアの核政策の歴史を扱ったものである。180ページ程の比較的短めの本だが、核兵器誕生からまだ80年しか経過していなのでこの本を読めば一通りの歴史の基礎知識は付くという感じである。入門書として書かれたらしく、分かりやすいので核政策に関する歴史を知りたいならまずこれを読めば良いのではないか。

 

詳しい感想を書くほど読み込んでいないので内容に関する話は殆ど出来ないのだが、意外だなと思ったのが核兵器誕生前から既に軍備管理に関する考えが米国政府にあって、実際に戦後直ぐ、まだ米国が核兵器を独占している段階から軍備管理だけでなく核廃絶に関する交渉が米ソ間を中心に国連で行われており、米国も積極的に取り組んだ点だった。結局合意まで持ち込めず、ソ連も核兵器を手にし、その後両国は数万発の核弾頭を保有するに至るのだが。

 

ただ訳者後にあるように、詳しく書かれていない歴史も多い。欧州やアジアの国は殆ど登場しないし、それらの国の核政策についての記載は無い。また歴史を中心に扱っているため、具体的な核戦略や戦力、兵器に関する話も少ない。これはある程度専門的な分野全てに言える事だろうが「これ一冊読めば全部わかるよ」って本は存在しない。具体的な核戦略、兵器、核兵器の原理、歴史それぞれを扱った本があるので、もしさらに詳しく知りたいのならそれらを地道に読んでいくしかないだろう。ロシア-ウクライナ戦争の影響なのか単なる偶然なのか最近核兵器関連の本が相次いで出版されている。母国語で専門分野の本が読めるのは幸福な事ではあるが、もしそのきっかけが戦争だとしたら悲しいものである。ただ俺が核兵器に興味を持ち出したのもこの戦争がきっかけなんだよなぁ・・・。

 

最後に核戦略、核兵器に関連して他に読んだことのある本を書いておくか。

・勁草書房『核の忘却の終わり』

・勁草書房『正しい核戦略とは何か』

・星海社『核兵器入門』

この中で核戦略について学びたいなら『核の忘却の終わり』が良いのではないかな。核保有国や関係国の現代の核戦略や専門用語が一通り学べると思う。俺が初めて読んだ核戦略に関する本だが、そんな初学者でもなんとか(時間はかかったが)読めた。専門用語が分かるようになるというのはかなり大事で、知っているだけで今後そのテーマを学ぶ際の理解度がぐっと上がる。特にニュースや講演会での専門家の話では、注釈無しで専門用語が出てくる事も多いので、予め知っているのと知らないとでは理解度にかなり差が出る。

 

なお兵器に関しては核兵器を搭載するミサイル・潜水艦・爆撃機に絞って書かれている本はほぼ無いと思うので(ホビージャパン『ソヴィエト連邦の超兵器 戦略兵器編』くらいか?)それぞれ個別に扱った本を読むしかないと思う。潜水艦に関しては『世界の艦船』と『軍事研究』のバックナンバーを買って読んだ。