先日中国の方から軍靴の音が聞こえると言ったわけだが、実際のところ中国の軍事力ってどうなのよという事でかなり大雑把であるが調べたことをメモがてら書き残しておこう思う。書かないとせっかく調べたのに忘れそうだし。使った資料は世界の艦船とWikipediaだが(Wikipediaを資料と呼ぶのが適切かはともかく実際に参考にしたのだからしゃーない)、下記内容に間違いがある場合は当然俺が悪い。

 

恐らく台湾有事が発生した場合に米中で激突するのが海軍だと思うのでまずそこから調べてみた。海軍戦力(艦艇数)を見ると下記のような感じ。なお両国とも艦の就退役を行っているので、数に関しては大体こんなもんという感じである(なので数が多い場合は5の倍数で示す)。

 

■大型艦艇の大雑把な米中保有数

攻撃型潜水艦 米:50(全て原子力、内2隻がSSGN) / 中:55(内SSNは11)

弾道ミサイル原潜 米:14 / 中:6

空母 米:11(全て原子力かつCATOBAR) / 中:2(全て通常動力かつSTOBAR ただしCATOBARの福建が艤装中→追記:これ勘違いで既に海上での試験中まで進んでいました)

ミサイル駆逐艦/巡洋艦 米:85 / 中:50

ミサイルフリゲート 米:0(ただしコンステレーション級が20隻計画) / 中:40

揚陸艦 米:30 / 中:35

(なお、揚陸艦以外の輸送艦や補給艦、小型の艦艇(ミサイルコルベットやLCS、機雷戦用の艦艇)は面倒になってきたので調べてない。とりあえず大型戦闘艦見れば大体分かるんじゃない、知らんけど。)

 

それでこうやって比較して見ると普通に人民解放軍海軍(PLAN)すさまじい戦力だなと思う。なんの為の戦力に見えるかというと、やっぱり台湾に侵攻する為と、介入してきた米海軍を迎え撃つ為だよなあと考えてしまう。大体米海軍の半分くらいの戦力を整備しようとしているのかな。もし台湾有事に米軍が介入するとしたら、最大で太平洋地域の部隊と多少の増援で総兵力の半分前後と対決することになるだろうし。特に目立つのがDDGとFFGで、こいつらが真っ先に増殖しているあたり、米海軍の空母との対決を相当意識しているのだろうと感じる。

 

そして個人的に気になったのは揚陸艦の方で、数の上での主力が072型LSTの各型(現役は072II型、072III型、072A型)でこいつが29隻ほどいる(俺が読んだ世界の艦船ではなぜか072III型について触れていなかった)。こいつは原型が1978年に就役を始めた古い船なのだが、LSTと呼んでいるように擱座着岸(ビーチング)といって直接海岸に乗り上げて艦首開口部から直接戦車を揚陸出来て10両の戦車を輸送する能力がある。それで中国は072A型を2003年に一度就役を完了したのだが、2015年から、つまり習近平政権になってから新造艦の就役を再開させている。古い072型(全て退役済)と072II型を置き換えるのが目的のようなのだが、つまり中国はこのようなLSTは減らさないという方針であるらしい。手本としているであろう米海軍がビーチング可能な揚陸艦を無くしたのとは対照的である。しかも退役した072型が南海艦隊所属だったのに、新しく就役した072A型は東海艦隊の所属(台湾海峡防衛が任務の一つ、ただ南海艦隊も地理的には台湾に近いので深い意味は無いのかも)に変わっているし、陸上自衛隊の将来の戦車定数に匹敵する300両弱もの大規模な戦車部隊を揚陸させる能力とか台湾に上陸させる以外に何に使うんですかね・・・。

 

まあこうやって不十分かつ狭い知識を基に自分の頭の中で勝手に物語を作ることは陰謀論への第一歩なわけだが、中国自身が台湾との統一を絶対に諦めないし、必要なら武力行使も排除しないって明言しているからね。ロシアのウクライナ侵攻で再確認した通り、国家の意思、独裁国家の指導者の意思を軽んじるべきではないし、中国は言動と行動がちゃんと一致しているんで、やっぱり台湾侵攻が出来る準備をしていると見た方が良いんじゃないかな。本当に実行するかどうかは別として。

 

ただ「台湾有事近し!2020年代にも発生するぞ!」という説も出ているわけだが、これについてはそんなに早く侵攻するのは無理だし考えてもいないんじゃないと思っている。PLANはまだ発展途上であろう事と、核戦力の増強もまだ途上だからだ。増強著しいPLANだが空母と潜水艦はまだ米軍と非対称な分野であると言えるだろう。空母は現役の2隻はSTOBAR(スキージャンプ発艦+ワイヤー着艦)でCATOBAR(カタパル発艦+ワイヤー着艦)と比べると制約が多い。初のCATOBAR空母である福建はまだ艤装中(追記:上で書いた通り勘違いで既に海上での試験まで進んでいる)でこれから新規の造船も控えている。潜水艦についても主力はまだ制約の多い通常動力型か性能が低い原子力のどちらかしかない。作戦海域が中国近海になるだろうことを考えても、これで米軍の高性能潜水艦に対抗するのは厳しいだろうし、こちらもやはり新型潜水艦を計画している。また全体的に対潜ヘリの数も不十分らしい。その上日本の軍事介入の可能性もある。世界最強の米海軍と、世界有数の海軍力(とりわけ対潜能力)を誇る自衛隊の介入を鑑みれば、まだ戦力の増強を図っている途上にある中国が2020年代中に台湾侵攻を決断できる程の海軍力に到達するのは難しいだろう。戦力的に不十分だと判断しているから軍拡を続けているわけだろうし。

 

そしてもう一つ核戦力の増強も途上にある。露宇戦争に対してNATOが直接介入できずるにいる(と同時にロシアもまたNATOへの攻撃が出来ずにいる)のを見るに、核戦力が絶大な抑止力を持つ事が再確認できた。そして中国の核戦力であるが、現在新疆ウイグル自治区に大規模なICBMのサイロ群を建造しており、新型のSSBNである096型も建造中で、中国近海から米国まで届くとされるJL-3 SLBMも配備が始まったばかりだ。2030年までに1000発以上の核弾頭を配備するとみられているので、現状では無理だがゆくゆくは米国との相互確証破壊を成立させるかもしれない。

 

という事で台湾侵攻が仮に決断されるとしても2020年代中という差し迫った脅威というわけでは無いだろうと思う。ただ2030年代にはありそうだなというのが俺の考えである。中国と台湾の利害が一致する事が無い以上俺はもう戦争は不可避だろうと思っている。もちろん一生そんな決断がなされない可能性もあるし(専門家はこっちをメインシナリオとしている)そうあって欲しいのだが、中国の動きを見るにもう引き返すことは無いんじゃないかな。多分この結論を俺の中で補強するだけだろうが、もう一つの重要な要素である核戦力についても今度は調べるつもり。また雑な理解になるだろうけど。