わたしの記憶の中の
探り出せるだけの過去を辿ったとき
碧い...碧い海が見えた

潮の香り
波の唸り
他の子と同じように
砂浜を走り廻るだけの
体力(ちから)がなかった女の子
いつ壊れるかわからない
病んだ心臓を持って生まれた女の子

けれど 女の子は
幸せだった
心臓病であることが
女の子にとってあたりまえのことで
むしろ だからこそ
心の底に秘められた
人々の優しさに
大切に 大切に守られて
女の子は いつも
幸せだった

やがて十になったとき
女の子は海辺の街に”さよなら”を告げて
北の町に旅立った

生まれ出(い)でた者は必ず死ぬ
けれど 自ら命を絶つことほど
     生き続けられるはずの時間を
     自ら止めてしまうことほど
     哀しく 愚かしく 残酷なことはない
北の町で
守られていたヴェールを取り外して
現実という世界を
自らの目で凝視したとき
女の子は学んだ

再び時は流れて
六年という歳月が
北の町での女の子の思い出に降り積もったとき
六年前
守られる優しさを
あたりまえのものとして受け止めていた女の子は
守られる優しさが
どれほど貴重なものであるか
考えられるだけ
大人に近づいた

碧い...碧い海は
女の子が幼かったころと同じように
今も あの街のそよ風に
潮の香りを運ばせているのだろうけれど
海に...寄せる波たちは
女の子が幼かったころと同じように
今も 砂浜に立つ人に
唸り声を上げているのだろうけれど
あのころの瞳のままで
女の子が海を
見つめることはないだろう

わたしは今 走ることができる
生まれて来たときから今日まで
出会ったすべての人たちが
わたしにくれた優しさに感謝しながら
わたしは今 走ることができる
生きている その事実(こと)を
すべてのものに感謝し続けながら

あの街の 碧い海の
砂浜を...どこまでも--

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今回の作品、高校1年生のとき「宿題」として描いたものです。
こちらを描いたお陰で、たくさんの方とさまざまな形でのご縁がありました音譜
思い入れの強い作品かもニコニコ

ひっそり&こっそり、たまに堂々と…
占いのご用命も承ります恋の矢
ご興味ある方は、こちらも覗いてくださいねラブラブ
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