『奇想、天を動かす』島田荘司

|出版社:光文社

|発売年:1989年

|ページ数:451頁(文庫版)


◯ジャンル

推理/ミステリー/政治/歴史

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◯謎ランク

★★★★★★★★★★★★★

|島田作品の中でもトップクラスの

|ありえない謎である

◯物語の楽しさ

★★★★★★★☆☆

|物語の楽しさよりは、社会派的な主張と

|常軌を逸したトリックがメイン

◯キャラクターの魅力

★★★★★★★☆☆☆

|吉敷は御手洗と比べたらやや地味な

|印象がある

◯リーダビリティ

★★★★★★★☆☆☆

|読みにくい部分もあるかもしれないが

|全体的には読みやすい部類

◯得られる知識量

★★★★★★★

◯子どもへの安全性

★★★☆☆☆☆☆☆☆

|エロ描写:少々

|グロ描写:有り

◯おすすめ度

★★★★★★★

○おすすめポイント

・本格と社会派推理小説の融合

・屈指の超絶怪事件

・ピエロの奇術炸裂!!

・吉原花魁道中

・何でこんなの書けるんだろう級

◯総合ランク: (SS)

 

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感想

本格推理小説と社会派ミステリーの融合を狙ったという作品であり、実際にその試みは成功していると思う。


しかし本作はそんな事はどうでもと思ってしまうくらいの、超ド級の怪事件となっている。


ことの発端は、初めて導入された消費税の増税分を払わなかったことを、咎められたため起きた衝動的な殺人事件かと思われたが、吉敷が単独で調査を進めるうちに、過去のヤバい事件との結びつきが見えてきた!という内容。



さて、その怪事件は以下の通りである。


ピエロの謎

・疾走する電車で踊り狂うピエロ

・そのピエロがトイレで自殺、

 その死体はなぜか蝋燭に囲まれていた。

・と思ったら動いて銃を撃ってきた。

・トイレのドアを閉めてほんの数秒で消失。


轢断死体の謎

・ピエロが乗車した列車はその死の前に

 人を轢いていた。

 死体は一時的に列車に確保したが、

 その死体が起き上がった。


浮き上がる列車の謎

・死体が起き上がった後、車両が宙に浮かび

 謎の脱線事故を起こした。


灰色で赤い目の巨人の謎

・挙げ句の果てに出現した謎の巨人。


まさしく奇想が天を動かしちゃった、最強の怪事件としか言いようがない。


しかしこんなわけの分からない事件も足と知恵を使って解決してしまうのだからビックリだ。



気合の入った吉原の薀蓄
シリーズの年表や発売順を調べていたら、本作は『暗闇坂の人喰いの木』より前の作品だと言うことを知った。

『暗闇坂』やそこから始まる大長編の『水晶のピラミッド』や『アトポス』では、事件と関係があるのかないのかさっぱりなサイドストーリーが出てくるが、本書の吉原談がおそらくその島田流豪腕ミステリーの最初の1作なのかもしれない。たぶん。

私は上野や鶯谷、浅草には住んでいた場所の関係もあり頻繁に行っていたのだが、吉原については別にこれと言った知識を持っていなかったので、勉強できちゃった気がして良かった。

どうでもいいが、学生時代にラブホは7割は鶯谷を使っていたが、少し前に健康のため鶯谷付近を歩いていたら、立ちんぼ達は当時のままいて「あの頃変わらないなぁ」としみじみ感慨に耽った。

そして本書から学んだことによって、花魁はあんなババアどもとは別格の存在だということを知った。

嗚呼...懐かしのステーション


まとめ
本作も伊坂幸太郎氏の5選に入っている作品だが、やはり伊坂氏の選別作品はいずれもとんでもない事件であり、島田荘司にしか書けない素晴らしい内容となっている。

本作は他の吉敷シリーズを読んでなくても、さほど支障はない内容だったので、推理小説好きでまだ読んでいない方には超おすすめだ。

島田御大がどれほどの奇想をお持ちの方なのかが1発で理解できる内容である。

そう、やはり島田御大こそが"ゴッドオブミステリー"なのである。

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