艶獣 ② | 明鏡 ーもうひとつの信義ー

明鏡 ーもうひとつの信義ー

韓国ドラマ『信義ーシンイー』二次小説

艶獣 ②

昇藤(ルピナス)




『この機を逃すと行けぬと思います』
俺は何度も妻に言った
しかし、あの方ときたら
「まだ16歳よ」
『否、もう十六です』
十二で婚姻をする者もいる、相手だけでもと皆探すのです
「30を過ぎても焦らないわ」
『三十でございますか。其れではムガクシを選べと貴女は言うのですね』
「そうじゃない。あなたってわからず屋ね」
脱ぎかけた衣をサッと羽織り直し、寝屋から貴女は出て行こうとした
まだ、腰帯は結んじゃいない
『俺がどれほど苦労をしたか貴女は知っちゃいないんです』
「それってどう言う意味かしら」
『年に何人押し付けられると思っているんですか』
「もういいわ」
椅子に掛けられていた腰帯を右手で勢いよく引っ張り、握りしめ出て行こうとされた

『俺は、どちらも手にしろとルビはいいます』
「私は、まだ早いと忠告するわ」

貴女はなんと頑固な女だ
宵の風が窓の隙間から流れ込んでくる
上掛けをきちんと掛けて寝ているであろうか
この季節は、風邪を引けば長引くのですよ
冷たい風が当たっていた左腕に右手を当てた
『つめたいじゃないか』
貴女は、今夜は何処で寝ちまったのだ
静まった頃合いをみて俺は寝屋から抜け出した
そっとそっと・・・廊下を歩いた
夜着の裾を両手で少し持ち上げ、傍から見れば滑稽極まりない
貴女は此処の決まりを知っちゃいない
時を逃せば、相手も選べずルビは側室になっちまう

「おっぱ」

俺がシンの部屋の前を通り抜けようとした時にルビの声がした
こんな夜更に何をしている

『ダメだと、俺は言っているのです』
「かぁ様に頼まれたのね」
『ユ先生が言ったからじゃない』
「やっぱり、シンはかぁ様が好きだから何でも聞くのよ」

ここも揉めているのだな
では、俺はやはり・・・あの方を探しに

「じゃ、シンの奥さんになる」
『はい?』
「大叔母様は、嫁に行けそうにないからムガクシになれ!と言うの」
『まさか、違うと思うが』
「16歳で残っているのはいないって」

子リスのように頬を膨らませ怒る姿も可愛くて仕方がない
手を伸ばし抱きしめてしまいたくなる

『それより何故ここに来たのですか?』
「かぁ様が私の寝台で寝てしまったからよ」
『ユ先生ですか?何故貴女の寝台を・・・まさか』
「父様とケンカしたんじゃない?」

二日に一回、いや・・・三日に一度は口喧嘩をし右と左に顔を背けるが
半刻ほどすれば、ユ先生は将軍に手を引かれ自室へ戻ってしまう

『今頃将軍がユ先生を探していますよ』
「だから、私は部屋から出てきたのよ」
『そして俺の部屋に来てゴロゴロしているのですね』

寝巻きの前が乱れていますよ
俺はいつものように合わせを摘み直そうとした
白く細い首の付け根が薄らと赤くなだらかな肩と繋がっているように見えた

「パジャマが楽なのに」
『仕立て係に話せば、作ってくれますよ』
「本当?」
『明日俺と行きましょう』

俺の手が、ルビの首の付け根がから繋がっている肩に触れた
抱き寄せよく動く唇を奪ってしまいたくなる
ートントントンー
裸足で歩く音が急に聞こえた

「シッ・・・シン静かに、父様かしら」
『たぶん』
「黙って」

なだらかな肩から繋がっている白い手が俺の口を急に塞ぎ、体ごと飛び込んできた
胸の鼓動が激しく音を立てだし、耳が熱くなる

「気づかないふりをして」

真剣な顔をしてルビは言うが、果たしてあの方が俺達が気づいていないと思うだろうか

『はい』

俺は極々小さな声で返事をした
何度ケンカをしても必ず迎えにくると信じているユ先生
妻の怒りが静まるタイミングを見極め迎えにゆくあの方

『ルビ、貴女は好きな方を選べばいい』
「シン・・・おっぱ」
『俺は、待ちますよ』

ユ先生には悪いが、俺はそんなルビが好きなのです
将軍が、ユ先生を愛するように

「じゃ、おっぱの奥さんで」

ルビそうじゃない、そうじゃないんだ