到着ロビーに着く。



CMOの 松本さんが 迎えに来ているはずだ…




…はぁ



緊張する。



ポケットの中の クマくんをギュッと握った。












暫く 辺りを探して見たけれど、それらしき人がいない。

専務は 私の履歴書の写真を送ったと言っていたけど…


入社した時のものだし、、


私だと 気付かないかも…知れない。





そう思った時、


グイッと 腕を掴まれた。






「…見つけた。菜月ゆり。悪い…遅れた。」



「…… あ、、松本  さん ですか?」




「潤でいい。」




「…えっ。そそれは…」




「 ちょっと待ってて。」




…? 





搭乗ロビーに向かいだす。


見ると 両手に大きなスーツケースを持っている。
その傍に、老夫婦。










「私も、手伝います。」



片方のスーツケースに手を伸ばす。

私を チラッと見て




「…thankyou」




そう言って、片方のスーツケースを渡してくれた。


それから 老夫婦の搭乗手続きや 荷物を預けたりを済ませていく。



老夫婦が ゲート内に入る前に、松本さんに ハグしながら、多大なる感謝の言葉を口にしていたのを聞いて、、やはり 知り合いではなく、今 ココで会った方達なのだと 分かった。




…優しい方。


専務が言ってた通りだ。




老夫婦が 見えなくなると 私に向き直り、



「…お前さ、、その荷物 オレが持つ。」 



「…いえ。軽いですし、大丈夫 で  」



「だったらきちんと持ってろ! さっきからヒヤヒヤしてんだよ! ココは日本じゃないんだからな。隙があり過ぎだ。ひったくられてから、騒いでも仕方ないんだよ。」




彫像のような 美しい顔。

キッと睨む 瞳。



キツい口調に、、優しさが混じる。




「…心配してくださり、ありがとうございます。では、、しっかり持ちます。」



両手で カバンを抱えると



「…あんた 面白いな。」



って、言って。



「…状況把握も早いし、、まぁ…翔くんのお気に入りだけ あんじゃん。」



「…翔くんのお気に入り?  …翔くん???
ハッ!! まさか…せせせ専務のことですか? お気に入り? いえ!! とんでもないです!」




「…… ま、なんでもいいけど。。ああそうだ。腹減ってる? その辺で テイクアウトしてく?  車で食っとかないと、、ココから Apartment まで 3時間強 は あるから。」




「…ありがとうございます。では、そうさせていただきます。」




「了解。」




「あ……迎えに来て下さりありがとうございます。まつ  」





「二度言わすな。…潤でいい。」




「…えっ…と。それは流石に…」




「みんなそう呼ぶから。潤以外は、受け付けない。上司とかね、関係ないし。特にあんたは、直ぐに帰んだし。日本人ってさ、気使わなくていいとこで 気使って、使って欲しいとこでは 使わないんだよね。」




「…わかりました。では、潤……さん。」




「はい、やり直し。」




「…潤、、、いや、本当に 呼びづらいん」




「グダグダ言ってんな。時間の無駄だ。行くよ、ゆり。」





「…わかりました。潤。」






すっかり、潤…のペースだ…




にしても、、呼びづらい。






ハンバーガーをテイクアウトして、
車に乗り込む。





「…ゆり さ、、」




「はい。」




「…… 翔くんの 、、何?」





「…えっ…、、部下です。」




「翔くんはさ、、女性の部下を こんなに可愛がんないから。」 




「…」



確かに、専務は女子社員にも社外的にも 人気はあるけれど、それは周りが騒いでいるだけで 浮いた話は聞いたことがなかった。




「…その沈黙はなに?」




「…いえ…潤が、、言われたように、確かに 女子社員とは距離を置いてるような気がしまして。
…私には……私の恋人と専務が 仲が良いから 気にかけてくださるんだと思います。」 





「…ゆりの恋人って、どんなヤツ?」




「( ⸝⸝⸝¯ ¯⸝⸝⸝ ) 」




「ぷっ、、ぷっふぁ〜〜あははは〜 ち、ちょっと お前、なんて顔してんだよ!」




「え〜! だって、潤が 突然 二宮さんのこと聞くから、、頭が 仕事モードじゃなくなって…ハッ!!   …すみません。大変な失礼を 」 




「バカ。…敬語もいいから。 ここは 日本じゃないんだからさ。今の ゆりの方が、好きだな…オレは。」




「…」




「…じゃあ、ゆりの二宮さんについて、色々 聞かせてもらおうかな〜」





ずっと…この調子で。




Apartmentに 着くまで  

潤に ずっと振り回されて



でも、、


それが 私の緊張を
さり気なくとろうとしてくれているんだと…



分かっていた。




だから、この優しい上司の気遣いに…




惹かれた…













もちろん、、人として。