出発の便まで まだ時間がある。

荷物は殆ど送ってしまったから、手荷物も少ない。




何処かで時間を潰そうかと考えていたら…




「…菜月。」




こ、、この声は、、!!






「…せ、専務!! どうされたんですか?」



「…会いに来た。見送りだよ。」






専務には、勤務最後の日に 挨拶に行っていた。
まさか、専務自ら…空港になんて…



「あああありがとうございます!大変恐縮です。わざわざ こんな…」



「馬鹿! 声がデカい! それに オレと話す時、毎回吃るな!」 




「…すみません…」




「いや、、いきなりそんな悲しそうな顔すんな。。全く…ニノがヤラれるわけだな…」




「…はい? よく聞こえなかったのですが…」




「聞こえなくていい。それより、一人で発つなんて …。ニノが、断固として断られたって聞いたけど…?」




「…二宮さんには 仕事がありますし。私の為にお店休んだりして欲しくありませんし…見送りは断りました。…きちんとお別れは……してきましたし。」




「…寂しいか? 会えなくなるの…」




「…はい。寂しいです。」




「フッ…素直だな。ま、離れて見えるモノもあるかも知れないしな。」




「…離れて見えるモノ…ですか?」




「うん…ま、、あ。これ。」




紙袋を差し出される。




……超一流高級 文具メーカーのものだ




「えっ!! あ、そんな、」



「いただけません、、は、なしな。それに オレからじゃない。楠からだ。」




「楠さん! どちらにいらっしゃるんですか?」




先日 専務に挨拶に行った時も、楠さんは外出中で会えなかった。




「…車にいる。なんか 別れんのとか苦手みたいでさ…。オレに行けとか、言うし…どっちが秘書なんだよな〜」




専務が 笑いながら言う。




「…そうなんですね、、お会いしたかったです。」




専務が 再度紙袋を、私の前に差しだす。



…しっかりと受け取った。



「ありがとうございます。楠さんに、よろしくお伝えください。ずっと、、感謝しています。」




「ああ。伝えとく。そうだ…菜月に 話しとくことがあったんだ。」




「…はい。」




「…この前話した、お前の上司がオレの友人だって話、、」




「…はい。」




「……到着ロビーまで 迎えにくるって。」




「……えええっー! なななんでですか!」




「…いや、その…まあ、よくわからないけども、オレが 菜月と昨日メシ食った話したらさ、、そんな仲良いなら、迎えにいくよって なって。家も、社で 借りてるとこ分かりづらいらしいから、ついでに案内するって言っててさ。仕事も 休みだし、暇だから…って。」 




いきなり 上司に空港まで迎えに来てもらうなんて、、ありえない。



こうして、専務に見送りに 来ていただいてるのだってありえないのに…。




「……あの、、専務。」



専務は 私が何を言おうとしたのか、すぐに分かったらしく、首を横に振った。



「…あいつ、頑固だから。オレ止めらんないから。ま、大丈夫。いいやつだからさ。」




「…はい。…あ…まだ、お名前をお伺いしてなかったです。それに、、迎えに来ていただいても、お顔が…」




「顔は 菜月の写真を送っておいた。履歴書の写真だけどな…アイツの名前は、、松本潤。じゅんは、潤うの 潤だよ。」




「松本潤さん ですね。役職は…」




「…Chief Marketing Officer / CMO だよ。」




目の前が、真っ黒 になる。

最高マーケティング責任者…
CMOが、私を迎えに?





「ま、あんま役職とかは、気にすんな。要は、人と人だから。」




「…は…い。…あ、でも 私の直属の上司と言われてましたよね…?」




「ああ。それに関しては…菜月が転勤じゃなく一時的な出張だから部署に配属というより 潤と行動することに なってるみたいだな。今回の美術館は、向こうでも扱いが特別でさ。更に、美術館の出資者が 潤の知り合いで、そちら側からの要望もあって、潤がこの件の統括することになったらしい。」 




「…分かりました…」





「…クククッ。そんな緊張するなよ。。あ、そろそろ時間だな。」





「…あ、、はい。わざわざ見送りに来ていただいてありがとうございました。凄く緊張してますが、、頑張ってきます。」




「ああ。ま、お前の場合は、あんまり頑張りすぎるなよ、力抜いてけ。…ああでも、潤が 可愛がってくれるだろーから、大丈夫だな。」



専務が ニヤリと笑った…






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