二宮さんと 手を繋いで 家に帰る道を歩く。
今夜は 満月で…
月が 満ち足りた妖しい光を放っていた。
何も話さなくても…
お互いの気持ちが 呼応し合っているようで
このままずっと…
ふたりで 歩いていたかった。
🌕
部屋に入り、電気をつけようとしたら
やんわり手を止められた。
「…こっち 」
手を引かれ、窓際に連れて行かれる。
二宮さんが カーテンを開けると…
月明かりが部屋に入りこむ。
二宮さんが クッションをふたつ
持ってきてくれた。
「…ん。」
クッションに 座る。
二宮さんが 窓から月を見ている。
月明かりに照らされた 二宮さんが…
とても…
綺麗だった…
でも…
思わずギュウっと、抱きしめる
「...ゆり 」
二宮さんは 私の髪を指で梳きながら、
包みこむように私を抱く...
彼の指先から、温もりから...
伝わる…気持ち...
「...ん? どした?」
「... 月から迎えがきて、連れて行かれちゃいそうですよ…」
「...行っちゃうのは、、あなたでしょ?」
「...二宮さん 」
二宮さんは、急に力強く抱きしめてきて、
肩に顎を乗せる。
「...ごめん、、、幸せ過ぎて...離れんの辛くなってんのよ、、オレ。」
「...二宮 さん...」
「 ...きっと半年なんて、スグなんだと思う。普通に仕事して、いつもと同じ毎日を過ごしてさ..... だけど、、ゆりがいる今を知ってしまったから..... いない日常が どれだけ耐え難いのか、、想像つかないんだよ…」
月明かりの中、消えてしまいそうな儚い恋人
その綺麗な 頬に手を添え…
口付けた…
触れあった唇を、ゆっくり離すと
二宮さんは、、
柔らかな笑みを浮かべた。
その微笑みが 切なくて…
思い切り 元気な笑顔を向けた。
「... わたし、、////////// すっっっごい 愛されてますね♡」
二宮さんが、照れくさそうに 口元を腕で隠す。
「...ん。」
「...知ってます?」
「ん?」
「私も 二宮さんを 愛してます。」
「////////// ん。」
「...毎日連絡してもいいですか?」
「ん。」
「離れてても、毎日 二宮さんが 大好きですよ。」
「ん/////」
「 …二宮さん、、初めて 二宮さんのお店に行った時のこと、話してもいいですか?」
「… んー。一目惚れじゃなくて、コーヒーに惚れたってやつ? 傷付きそうだから…やめとく。」
口を尖らせて拗ねるのは、二宮さんの可愛い癖だ。
尖らせた唇を 指で摘んで 笑うと…
二宮さんも 仕方ないな…って 目を細める。
「… 森村さんの事があって、人が信用出来なくなって…仕事も、、辛くて… そんな時、たまたま 出向先のビルの近くだったお店の前を通って、、お昼まだだったから、入ったんです。」
「…ん。」
「ランチの時間は 過ぎてて、、とりあえず サンドイッチとコーヒーを注文しました。コーヒーって、好みもあるし…外で飲む時、中々 好きなコーヒーに であったことがないから…そんなに期待してなかったんです。」
「ん。」
「…コーヒーが運ばれてきて、匂いがいい匂いで。一口飲んだら…すごく美味しくて。美味しいだけじゃなくて…優しい味がしたんです。…私、熱いの苦手なのに、慌ててのんだから 舌がヒリヒリしちゃったの 覚えてます。」
「…猫舌だもんね、ゆりは 」
「…サンドイッチ食べながら、、このコーヒー、さっきの人が 淹れたのかな…それとも 奥に人がいるみたいだから、その人かな…って、考えてたんです。で、御手洗に 行く時、カウンター近くを通る時、、カウンターの中で コーヒーを淹れている人がいて…」
「…オレ?」
「はい。…… なんていうか、とても丁寧に 淹れていて、コーヒー 一杯を、大切にしてるのが伝わってきて。だから、あんなに美味しいんだ…って。優しい味がしたんだ…って 納得したんです。それに…コーヒーを淹れてる二宮さんに…惹かれたんです ////」
「//////////」
「それから、、なるべくお店に 通いたくて。でも会社からだと少し遠いから、休み時間ギリギリで…すぐ帰らないと行けなくて。」
「…だからあんなに 忙しなかったのか…」
「 はい。ごめんなさい…まさか、二宮さん達が 、私のこと覚えてくれてるなんて 思わなくて…私、『にのあい』に 行く度に、、好きになって…」
「…『 にのあい 』が?」
「『にのあい』と 『モテモテマスター』が、です♡」
二宮さんは、鼻の上をポリポリして…
「…全然、、知らなかった……」
って、言った。