閉店間際、人が入ってきた。
「...間に合った〜」
入るなり、カウンターに突っ伏してる。
どれだけ急いできてくれてんの...
「...翔さん、いらっしゃい。来てくれたんだ...電話でも、よかったのに、、」
翔さんに、森村のことを聞きたいと...留守電にいれてた。
ゆりのこと、、
あいつは、、
絶対 そういう目で見てたから…
「...ちゃんと 会って話しといた方がいいと思ってさ。ニノが 心配してんの わかるし。..... 今日は、、菜月くんは?」
「... いませんよ 」
「そうなの? ...そっか、あいつまだ残業してんのか、、」
「...専務よりも 忙しいみたいだね。」
言ってすぐに
ゆりに会えない寂しさを、関係のない翔さんにぶつけてる自分が 情けなくなった...
けれど、翔さんは気にせずに
「...ああ。森村がいなくなったから、残務整理とか、関わってた企画とか、色々あんだろーな。」
「いなくなった?」
「...今日付で自己退職という名の、クビになってる。だから、ニノが心配してる様なことは、大丈夫だと思う。もう菜月くんに、会うこともないだろうし、、」
「クビって、例の盗作で?」
「...いや、違う。別件だよ。それは...話せるような話じゃないから。菜月くんにも、なにも話してないしね。」
本人は、それが分かっているのか?
ゆりが、何か言ったと 勘違いされてたりしたら…
オレの疑念に、翔さんが 直ぐに気付いた。
「大丈夫。間違っても、菜月くんを逆恨みするようなことは ないよ。されるなら、、オレだな。」
安心しろよ...と、微笑む 翔さん。
優しいんだ 翔さんは。
オレを安心させる為に、忙しいのに わざわざやってきて説明してくれるんだから。
翔さんが そういうのなら、大丈夫だろう。
「...よかったね。カズ。...じゃあ、翔ちゃん 美味しいカレーをどうぞ 召し上がれ。」
「...おおっ! 美味そう! いただきます!」
翔さんは、まーくん特製の野菜たっぷりカレーを、物凄く美味そうに 食いながら、思い出したように話し出した。
「...あ、そういえばさ…」
「ん?」
「...楠が、あ...オレの秘書なんだけど、、菜月くんが、他の奴らから 妬まれるんじゃないかって…心配しててさ。」
「...どういうこと?」
「怖えから、睨むなよ。いや、これはオレのせいじゃないっつーか、、、いやでも、オレのせいなのか、、、」
「...翔ちゃん、わかりやすく説明して?」
「...NY美術館の件って、、わかりやすくいうと、花形っていうか、皆んなの憧れみたいなもんでさ。。森村がいなくなったからとはいえ、補佐役だった若い女子社員が責任者になるのに、納得出来ない連中がいるんだよ。.....更に、彼女を推したのが、オレだからさ...女子社員の妬みも かうんじゃないかってさ…」
「...翔さんのせいじゃん。完璧に。」
「ニノ〜〜。そうはっきり言うなよー。」
「...けど、もともと菜月のデザイン画なんだから。だったら、」
「...それがさ。彼女、言わないでくれって、言うんだ。」
「えっ? なんで?」
「...多分、森村が退社していなくなったのに、更に盗作したっていう追い打ちをかけたくなかったんじゃねーのかな、、、彼女 優しすぎるのは、、どーなんだろーね。。悪いヤツなんて、いっぱいいるからね、、。」
「...とりあえず、今現在 イヤな思いしなきゃいいけど。」
「 …それは、菜月くんなら大丈夫じゃないかと...オレは思ってるよ。」
「.....なんか、言ってたの? 菜月 」
「...秘書に言われて、気になったから、ちょっと部署 覗きに行ったんだ。…バリバリ働いてたよ。楽しそうにさ。」
「...そう。」
「ああいう姿見せられたらさ、誰もなんもいえねーんじゃないかな。ま、杞憂に終わるといいよな。」
ゆりから送られてきてた 張り切ってるクマのスタンプがゆりの姿に重なって、なんだか微笑ましくなり、口元が緩んだ。
...けど、頑張り過ぎないか、、心配だな
「...ねぇ、翔ちゃん。その秘書さんのこと、好きなの?」
「ばあっっか!! なんだよ、急に! ちげーし。んな ワケねーじゃん!! なんで そうなるワケ?!」
今までの翔さんは、何処へやら...
まーくんの言葉に慌てて、顔を 真っ赤にしている。
笑えるくらい わかりやすい...
突発的なまーくんの質問は、図星だったみたいだ。
翔さんが、更に いいわけ を重ねようとした時、
カラン♪♪
扉が開いて、
ここのテナントとの オーナー と
安斎さん...が、いた。