6月に入ってから、
麗香がニヤニヤしだした理由。

わからないはずがない。

言った覚えがないから、
履歴書見たんだなって、すぐにわかった。


だけど、オレが気が付いてないって思って
嬉しそうに何か考えている麗香をみてたら、
わかってるって、言えなくなった。

全く…バカだね麗香は。
誕生日なんか忘れるヤツいないって。


それにオレの誕生日が、父親に紹介することよりも大事な事だなんてかわいい事言うから、堪らなくなってキスしてしまった。


何を計画してるんだか、毎日オレの顔見ては満面の笑みを浮かべてる。

まいったね。この子には。

誕生日が待ち通しいなんて、オレもはじめてだよ。あなたがオレを想って考えてくれてる…
それだけで…充分幸せだよ。


オレはあなたがいれば、
他には何もいらないから。






リュウの散歩の時に、

「カズくん、来週の日曜日に、家に来ない?両親に紹介させて欲しいの。」

って言ってきた。

あえて、日にちを言わないっていうね…
気付かれないよう努力してるとこが、またかわいい。


「やっと紹介してくれる気になったんだ。
     …あれ?日曜って何日だっけ?」

ワザと聞いてみる。

「……えっと。何日だっけ?まぁ、とりあえず日曜だから。ね。」


笑いたいのをグッと堪えた。

その代わり、引き寄せて包み込む。
抱き心地がいいんだ。麗香は。






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日曜日


お昼を麗香の家でご馳走していただくことになった。

うちの母親にも、麗香とのことを話さないと…と思いながら、今まで話して来なかった。

朝ご飯を食べながら


「…ねぇ、今日、真崎先生んとこにお昼ご飯招待されてんだけど。」


「…」


「多分そのまま出掛けるから、夜もいらない。」


「…あ、そうなの。わかった。行ってらっしゃい。」



そう言うと、慌ただしく洗い物を始めた。


ん?
なんで、聞いてこないんだ?
真崎先生んとこに行く理由。

今の沈黙は?

それに、誕生日の話もしない。
毎年メールしてきてたくせに。
忘れてんのかな。
たった一人しかいない息子なのにね。
ま、いいけどさ。



なんだかおかしな気がしたが、
とりあえず食事を済ませた。



麗香が車で来ないように言うから、遅刻しない様に早めに家をでた。

いつも麗香とリュウと散歩している道のりを一人で歩くのは…なんだか寂しい。






……あれ?…リュウ?

遠くの方に、見知らぬ男がリュウを連れて歩いてる。
リュウじゃないのか?
だけど、あれはどうみても…


走って近くに行くと、リュウがこちらを振り向き
オレに気付いた。
そして、嬉しそうに二本足で立ち上がり、飛びついてこようとした。


リードを持っていた男が、
びっくりしたように、リュウとオレを見た。




そして、フニャフニャと柔らかく笑って

「もしかして、二宮先生?」

と言った。