ニノが立ち上がった気配で目覚めた。
いつの間にか隣で眠っていたらしい。


「…シャワー借りていいっすか?」


「…ああ。」


そのまま浴室に行った。
シャワーの音が聞こえてくる。


ニノがいた場所に…キツイ香水の匂いが残る



オレはクローゼットに行き、ニノの着替えにスウェットの上下を見繕い、脱衣所にタオルと一緒に置いた。



コーヒーメーカーをセットして、ニノを待つ

昨日からの疑問をぶつけるべきか悩んでいた




ニノがオレのスウェットを着て現れた。
サイズは丁度いいみたいだ。


「翔さん、これ、すみません。…貰いますね。あと…オレの服捨てといてください。」


「え?全部?」


「あ、はい。…気持ち悪いんで。」


「…あのさ。1個だけ聞いていい?…昨日から思ってたんだけど…香水だよな。あれ。」



「…そうすっね。」



「誰かと…呑んでたのか?」


「…知らない女。向こうは知ってるみたいでしたけど。」


「…そっか。」


「……そいつのこと、抱こうとしたんだけど。途中でイヤんなって止めました。だから、体が気持ち悪くて。シャワー、助かりましたよ。」


仔犬みたいな目で、なんでも無い事のように言うから、頭にカァと血がのぼる。


「おい。…お前自分が何言ってるかわかってんのか。」



「…?」


なんでそんなに、普通の顔してんだよ。
おまえはさぁ、


「麗香のこと好きなんだろ?何やってんだよ」


ニノがオレをみた。
まるで、共犯者を見るかのように。


「……麗香が、もういないって思ったら、何もかもどうでもよくなったんですよ。」


マジか……
どうでもよくなんなよ。
子供か。おまえは……
だけど、それが真実なワケね……


「はぁ~~…。おまえね…。それじゃ、オレにも責任の一端があるワケか。」


「…」


「……これで最後だぞ。絶対な。」



「だから、気持ち悪くなってやめたんですって。もう、しませんよ。」



全く…反省してんのか?
一言くらい、イジメとこうか。


「…麗香泣かせるなら、オレが奪いとるからな」



「即答で断られたのに?」



「ニノ~~。おまえね、それ、禁句だからな。」


ダメだ。
全然、余裕だし。



だけど、
…急にオレを見る目に熱がはいる。

そして、キッパリと言った。


「翔さん…もう2度とないですよ。」




「ああ…信じるよ。」



スゲー後悔してんだな。
やっぱ。
もうこれ以上、オレが言うべきじゃない。




それから、コーヒーを飲むと、ニノは帰った。
まだ仕事までに時間があるから送ると言ったが、
それは、断られた。

それなら、少しでも眠ってくれって言って。


まだ、起きなければいけない時間までにはだいぶある。


寝室のベッドに入ったが、眠れるはずが無い。


考えなくていいことばかり考えてしまう。



まぁ、大丈夫だと思うけど…
知らない女だって、言ってたし…



……なんで、オレがバレ無いようにって悩まなくちゃいけないんだよ!


はぁ~~


オレの悩みが杞憂に終わればいいと思う。
2人の幸せが、オレの一番の願いだから。


そう思いながら目を閉じた。