更衣室に入ると、私の予感に間違いがなかったと確信した。


看護師さんたちは、二宮先生の話をキャーキャー言いながら話していた。


「麗香先生、きましたよ~。二宮先生♡
もう、ほんとに かっこいいんですよ~」



と、一番新人の去年から勤務している早苗ちゃんが真っ先に話しかけてきた。

早苗ちゃんは、実習に来た二宮先生を
「イケメン獣医」と呼んで、
彼が来るのを心待ちにしていた。


後ろから、1番勤務の長い京子ちゃんが、
少し呆れたように

「麗香先生、おはようございます。もう、みんな昨日からずっと二宮先生の話ばっかりで…困っちゃいます。」



早苗ちゃんは、私に軽く頭を下げて京子ちゃんの横を通り抜け、他のスタッフの所へ行ってしまった。

京子ちゃんは、勤務15年の看護師さんのチーフ。父でさえ、頭が上がらない時もある。



「二宮先生、入り口のところであったわ。」


「そうなんですか。……まぁ、確かにかっこいいですけどね。また、前みたいにならないといいですね。」



……京子ちゃんが考えている事を、私も考えていた。


以前に勤務していた男性の獣医を取り合いになって、看護師2人が揉めてしまったことがある。

結局、3人とも辞めてしまったが、職場全体が嫌な雰囲気になった。あんなのはもう二度と嫌だ。



「ね。…でも、気にするのやめよう。いつも通りで。ね。」



「そうですね。あ、でも二宮先生、麗香先生に会いたがっていましたよ。今日もお休みなんだぁ…って、昨日残念がってましたもん」



「?…そう?…なんでだろ…」



それに、初めましてじゃないって…言ってた。



何処かで会った?



…全然思い出せないけど。



白衣に着替え終わり、ミーティングルームへ向かった。