漫然と本を読まない読書術 先人はこうして本を血肉に変えた
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出版不況が叫ばれて続けている昨今、インターネットで情報をタダでチェックしている人は数多い。そうした時代だからこそ、ネットでは得難い読書に力を入れ、他の人との違いをつくりたいと考えている人もいるだろう。

しかし、読書に取り組んだのはいいものの、作者の思想がなかなか自分のものにはならず、ただ字面を追って漫然と読むケースも少なくない。そんな時、先人はどういう読み方をしていたのか——。本欄では、先人が実践していた「読書の仕方」に迫りたい。


◎儒学者・孟子が説く読書の方法

読書の効果は、読む前と読んだ後に自分の中に"変化"が起きるどうかだ。その変化を最大限に引き出すために、儒学者・佐藤一斎は次のように心掛けていたという。

「読書の法は、当に孟子(もうし)の三言を師とすべし。曰く意を以て志を逆(むか)う。曰く尽(ことごと)く書を信ぜず。曰く人を知り世を論ずと」(『言志録』第239条)

(現代語:読書の方法は、孟子の言う次の三言を師とすべきである。自分の心をもって、作者の精神を受け止める。書物に対しては批判的になり、全部を信用しない。作者の人柄や業績を知り、また当時の社会的背景を考えながら、読んでいくべきである)

孟子は、上記のプロセスを経て、孔子の真意を心で受け止められるようにすべきだと言っていたのだ。


◎朱子は「読書三到」

また、「儒教の中興の祖」である朱子は、読書で大切にすべき心得(読書三到)として、こう述べている。

「一つ、目でよく見ること(眼到)。二つ、声を出して読むこと(口到)。三つ、心を集中して読むこと(心到)」(『訓学斎規』)

つまり朱子は、読書には「精神の集中」が必要不可欠であると説いている。江戸時代には、朱子のような読書法が広く受け入れられていたと言われている。


◎「とにかく書き残す」が松陰流

では、教育者・吉田松陰の本の読み方はどうか。

松陰は、本を読んで心に感じるところを見つければ、必ずノートなどに書き残す癖があった。塾生に対しても、「読書に注ぐエネルギーの半分は、抄録に使うように」とアドバイスしていたという。

また松下村塾では、塾生が読んだ1冊の本をもとに討論をし、知見を深め合っていた。討論には勝ち負けがつきものだが、松陰は、道理を明らかにすることを優先すると同時に、塾生同士の学習意欲の向上を目的としていた。このやり方自体は珍しいことではなく、全国の私塾でも行われていた。

佐藤らに共通するのは、本を読むことのみを目的とするのではなく、いかに「自分の血肉」になるように読書の仕方を工夫していくかという点だ。読書効果の高め方には、先人に学ぶことが多い。
(山本慧)

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