​映画「PERFECT DAYS」役所広司さんの演技に唸らされる


昨日はカンヌ映画祭で役所広司さんが主演男優賞に輝いた「PERFECT DAYS」を夫婦で観に行きました。

前半は主人公のトイレ清掃員(役所さん)の一見変化のない生活が淡々とあたかもドキュメンタリーように描かれていきまずが、次第に小さな変化が積み重なっていき主人公の心の揺れや過去が明かされていきます。派手なアクションやドンデン返しはありませんが、役所さんの演技で魅せる味わいの深い映画でした。


映画館の車いす席には少々不満はありますが、話が逸れるので今回は割愛します。



 

 車いす人生初の転倒、そして人の優しさに触れる


映画館を出ると天気は予報通りみぞれ混じりの雨に変わっていました。


用事があって妻とはいったん別行動をとりました。横断歩道の方へ急いで漕いでいると突然体が前へ放り出されてしまいました。「何?!」


一瞬何が起きたのか分からず地面に横たわっている自分。幸い痛いところはないので倒れた姿勢のまま(私は自力では立ち上がれません)車いすを起こそうと後ろを見ると車いすはしっかり立っています。なるほど、キャスター(径の小さい前輪)が溝にはまって車いすが止まってしまい私だけが慣性の法則で前に転がってしまったようです。

転倒したちょうどその時、脇の駐車場を走行していた1台の車が私の左側で停車したのが分かりました。一方、右側で歩いていた若者が近づいてきました。

「大丈夫ですか?」

「お手伝いしましょうか?」

と口々に声をかけてくれました。自力でリカバリーする練習は何度かしたことがありましたが、ここはご厚意に甘えることにしました。

「脇の下を持ちますので・・・」

「せーのっ!」

の掛け声で2人の男性の援助で私は無事車いすのシートに座ることができました。

転倒してから30秒ほどの一瞬の出来事でした。

2人はその場を通りかかったということだけで協力して助けてくれたのです。左右にいる方一人一人に顔を向け感謝の言葉を述べると2人は何事もなかったように別々の方向に分かれていきました。


なんという優しさでしょう。車いす生活になり今までたくさんの人から優しさをいただきました。

この場をお借りして、たくさんの方々に感謝したいと思います。

「本当にありがとうございました」

病気になり不便なことは山ほどありますが、同じくらいたくさんの親切をもらいました。車いす生活もまんざら悪くはないと思えてきます。


信号が青になったのを見て雨宿りの屋根から飛び出し、横断歩道を渡り大きな駐車場を突っ切ってショッピングモールの中に飛び込みました。頭をはじめ、眼鏡、バッグ、ジャンパーはびしょ濡れになりましたが、心は幸せな気持ちでいっぱいでした。

素晴らしかった映画ともに、この日のことはきっと忘れないと思います。




これまで助けてくださった多くの方々に感謝の意味を込めて絵手紙を描きました。家にあった「市田柿」です。





今回の題材は「市田柿」
特徴はなんと言っても表面の白い粉。正体は乾燥によって水分と一緒に外ににじみ出て結晶したブドウ糖のようです。上手く表現できるか心配でしたが、本体の色を塗った後に白を置いたらそれらしく見えました。「白」の絵の具は不透明なのでみずみずしさがなくなってしまいましたが、今回の絵手紙で新しい技法を身につけることができました。