明け方、目が覚めると…人の動く気配が…
「ごめんなさい、起こした?」と、シニョンが…
「いや、…どうしたの?」
「うん、…帰るの」
「今から?…」
「うん…電車の始発が出てると思うから…服、着替えないと…何言われるか、解らないから…」と、恥らうように言った。
「ぁ、あっ、…そうだよね」
「ごめんね」
「いや、俺こそ…気が付かなくて…」
「じゃ、帰ります」と、言って…扉へ向かうシニョンを…追いかけて、後ろから抱きしめた。
「シニョン、愛してる」
「ユチョン先輩」
「先輩は、やめよう。ユチョンで、いいよ。…2人の時は…」
「…は、はい…」
「これ…」と、言って…鍵を
「私に…?」
「うん…昨日みたいに、外で待たれたら…気が気じゃないからな」
「本当に、いいんですか?」
「いいよ。…来たい時に、来ればいい」
「はい。…じゃ、会社で…」と言うと、アパ―トを出て行った。
この時、何故…鍵を渡したのか、今の俺には理解できなかった。
愛と言う、魔力なのか?…愛と言う、擬せ物のせいか?
本当に、其処に愛があったのかさえ…今は、解らずにいた。
アパ―トの扉を、開けると…生活の臭いがした。
始まってもいない…始めようともしていない、生活の臭いが…
「ユチョン?…お帰り」と、数ヶ月前にいたであろうシニョンの顔は…もう、無かった。
「ただいま」
「雨、大丈夫だった」
「うん」
「どうしたの…何か、あった?」と、…
「いや…あっ、…そうだ…知ってる?俺の部の部長…」
「うん、知ってるよ」
「今日、亡くなったんだ」
「えっ、…ほんとに?どうして?」
「俺も、詳しくは知らない。けど…ジニ先輩が、後で話すと…」
「そう~、ユチョン、清々した?…虐められてたもんね」
この言葉を、聞いた時…俺の安らぐ場所は、此処にはないと…感じた。
つづく
