「大きい…」
フレアはブリッジから合流した船を見渡した、
「ムサイよりもデカイですよね…」
船のパイロットは返事をする様に言って溜め息をついた、フレアにはグワジンクラスは有る様に見えた、実際にはそこまでの大型船ではない、だが今回の任務に派遣するには余りにも大袈裟な船だった
「準備が整いました…遅くなって申し訳ありません」
フラウがブリッジに顔をだす
「遅いぞ!」
フレアはフラウに怒鳴るがフラウはプイッとソッポを向き顔を引っ込めた
「…ケンカでもしたんですか?」
パイロットの言葉に
「なっ!何もしていない!お前達は本国に戻れ!」
そう言ってブリッジから出ていった
「…なっ…何かしたのかな?」
パイロットは少し想像して
『うらやましい…』
遠い目をしながら思った



先程まで乗っていた船とは雲泥の差だ…広々としたミーティングルームでフレアは溜め息をついた
「フレア…椅子にクッションが着いてる…」
フレアの囁きに涙が出そうだった、実際、待たされて入るのだが全然苦にならない、不意に入口が開き一人の男が入って来た
「お待たせしてすまない、艦長のデミトリだ」
そう言って手を差し伸べて来た、その行動に眉を潜めながらもフレアは手を取らず敬礼で返す
「私がフレア・スン、隣に入るのがフラウ・スンです、宜しくお願いします」
その言葉に艦長は差し出した手を頭に持っていき
「そうか…ベイカーから何も聞いてない様だな…」
そう言って二人を座る様に促す、言われるまま座ると対面に座った艦長は話しだした
「まず言っておく、この船はゲイン博士の所有する民間船だ」
艦長の言葉にフレアは驚いた
「この大型船が個人の所有物なんですか?」
とても信じられないと思いながら質問したが
「やはり聞いてないか…私はゲイン博士の雇われ艦長だよ、この船は間違いなく個人の所有物でゲイン博士の研究所でもある」
フレアは呆気にとられた、大将クラスの戦艦を一般市民が乗り回している様な物だ
「あの…それでは合流する部隊とは…」
フレアの問いに
「この船にはもう一つ船がくっついていてな…それでもムサイと同レベルの船なんだが、それを軍に貸すと言う形をとっている、君の部隊はその船で待機して貰っている」
フレアはまだ腑に落ちない
「それならば先に部隊に合流するのが筋では無いですか?何故、此処に?」
フレアの問いに艦長はうなずき
「まず、この作戦はゲイン博士の計画を中心に動いていて総指揮はゲイン博士がとっている、軍はその手伝いをしていると思ってくれ、それとこれを預かっている、君にだ、」
そう言ってフレアの前に差し出す、階級章だ
「本日をもって君は少佐だ、おめでとう」
フレアは複雑な気持ちでそれを受け取る艦長とはいえ一般人から昇格を告げられるとは…
「有り難う御座います…」
フレアの表情で気持ちを察した艦長は
「今回の任務は非常に特殊な物だ、混乱する君の気持ちも分かるがシンプルに受け止めて欲しい…君の任務はサラとサラの操るモビルスーツを奪取する事…それを博士に引き渡す…それだけだ、それ以外は考える必要は無い」
気遣う様に言った積もりだろうが高圧的に聞こえて苛立ちを覚えながらも
「解りました」
とだけ答えた、艦長は一息つき
「すまない、そんな気持ちにさせる積もりは無いんだが、君達は任務を遂行する事だけを考えてくれ、余り深く関わらない事だ」
艦長の言葉に
『何か裏があるのか…』
そう思えてならない…が自分とて、自分の為に…フラウの為に戦っているのだ、利用出来る物なら何でも利用してやる…
「話しは以上ですか?ならば部隊と合流させて頂きたいのですが」
そう言ってフレアは席を立つ、黙って聞いていたフラウも慌てて席を立った
「いや、まて!まだ話しは終わって無い!全く…ベイカーの言う通りだな…大事な用件を忘れている」
慌てて扉に向かって話しを続けた
「ゲイン博士に話が有るのだろう?連絡は来ている別室で博士がお待ちかねだ」
そう言って扉を開く、チラリとフラウを見やり
「良い女に好かれるのは良い男の条件だ、妹とて気にするな」
そう言って案内を始めた、大佐とどういった関係か知らないが
『大佐…口が軽すぎます…』
また少し涙が出そうになった、
案内された部屋は博士の個室の様だった、入るそうそうギョッとする、机に向かっていた博士の傍らに全身、黒ずくめのマントを羽織った人物が立っていた、此方に気付きその人物は振り向いた、とても綺麗な黒髪の顔には銀色の仮面が顔を覆っていたのだ
「遅かったな…待ちくたびれたよ」
机に向かっていた博士も振り向いた、
「お久しぶりです、博士」
フレアの一礼に博士は手をヒラヒラさせて答えた
「話しは聞いている」
そう言って博士はフラウを見つめた、するとフラウはフレアの後ろに隠れる様にフレアの腕を抱き締めた、ふんと鼻をならし
「報告通りの様だな…しかし意外な結果だ…」
そう言って机に向かって資料をあさりだす
「あの…博士…」
フレアの言葉にまた手をヒラヒラさせて
「結果は上々だ、予想外だが…お前にそのままフラウを任せる」
そう言ってフレアを見つめた、
「いや…あの…それは嬉しいのですが…私はどうすれば…」
その問いに今度はフラウを見やる
「フラウ…フレアは好きか?」
その問いにフラウはフレアの顔を見つめ
「私は好きです、でもフレアは違うみたい…」
その返事にフレアは慌てる
「フラウ!…」
急に博士が立ち上がりフレアはビクッとして博士を見る、フラウの近くに来た博士は
「フラウ、兄弟の意味は知っているか?」
と尋ねた、その問いにフラウは頷いて
「同じ両親…血が繋がっている…私に一番近い人…お兄ちゃん」
そう言ってフレアを見つめた、
『何だ?何を話してるんだ?』
フレアは自分を無視して行われている二人の掛け合いに硬直する
「ならばフラウ、お前はフレアにどうして欲しい」
博士は次々に問う
「優しくして欲しい…」
フラウも次々に答えた
「フレアに求める優しさは他の人間と同じか?」
博士
「フレアには私と同じ気持ちでいて欲しい、他はどうでも良い」
フレア
「ならばフレアに愛されれば嬉しいのか?」
博士
しかしその問いにフラウはつんのめる
「愛するは…好きの上…」
そう言ってフレアを見つめた
「フレアに愛されれば…幸せ…」
そう言って頬を染める
フレアは変な汗が出てきた
「決まりだな、」
博士はそう言って机に戻る
「はっ?」
博士の言葉に戸惑い
「何がですか?」
と問う
「お前はフラウの気持ちに答えなさい、別に妹としてでもいい、お前の存在がフラウの人格を安定させている、私の出した条件は忘れてくれていい」
博士の言葉に暫く考えて気が付く
『答えになって無い!』
フレアは慌てて
「あの博士!そうでは無くて…」
しかし博士はフレアを制して
「フラウの感情は中々面白い…計画に組み込んでも良いな…」
そう言ってフレアに向き直る
「L.Pの名をフラウに与えよう、私の行なっている計画の略称だよ、エルピー・フラウと名乗りなさい」
博士はフレアの事などお構い無しに話した
「あの、博士…私の対応では無くフラウの感情を…カウンセリングしては貰えないのですか?」
フレアはやっと自分の意見を言えたが
「これ以上の感情操作は危険だ、今のままで十分な結果は出てるんだ…問題は無いだろ?」
博士の言葉に期待した返事は帰って来なかった
「そんな…」
問題が有りすぎるとフレアは肩を落とす、博士は溜め息をついて
「この作戦が終われば君達二人は用済みだ、軍を除隊しなさい」
博士の言葉に絶句する
「なっ!?」
博士は構わず続けた
「静かな環境で暮らせばフラウの感情も安定するだろう、元の人格とも折り合いを付けて普通の生活がおくれるかもしない…保障はしないが…そう言った生活をしていれば自分の間違いに気が付くかも知れない、手配はしといてやる、相応の金もくれてやる、コレで問題は無いだろう」
初め、何を言って入るのか分からなかったが理解して来るとフレアは
「ほっ…ホントですか?!」
大声で叫んでしまった、博士は眉間にシワを寄せ片目をつぶり
「話しは以上だ、部隊を待たせてある早く合流しなさい」
博士の言葉に元気良く敬礼して二人は出ていった
「調子の良い奴だ…」
博士は見送りもせずにまたテーブルに向かった、すると傍らに立っていた人物はクスクスと笑いながら
「御優しいのですね」
と話しかける、その声で人物は女性である事が分かる
「必要の無いものを切り捨て、 結果を出したのなら相応の礼をするだけだ…私にはお前さえ居てくれればそれで良いよ…なぁララァ…」



フレアは歓喜していた
『この作戦が旨く行けばフラウに普通の生活をさせてやれる!』
足取りは恐ろしく軽い、フレアの嬉しそうな顔にフラウも嬉しくなった、そして
「あの人…嫌な人だけど、良いこと言った、これからはフレアは優しくしてくれるよね?」
フラウの問いに辛い思いをさせてしまった、と思いつつある事に気が付く
「フラウ…いつまで腕にしがみついてる気だ?」
フレアの問いに暫く間を置いて
「ちっ…」
と微かに舌打ちするフラウに気が付く
『こいつ計算している?!』
フレアは腕を振り払い
「先に行くぞ!」
そう言ってフレアはフラウを置いていく、振り払われた勢いでクルクル回っていたフラウも慌てて後を追った






『参ったな…』
クリスは港から車を走らせていた、艦を港に着けて早々、予定の人物と合流出来たのだが、武装している上にどう考えてもかなりの機密事項を持ち歩いている事に驚いてしまった、その上
『アルが追ってを撃退したなんて…」
奇妙な偶然に更に混乱してしまった
『たのみずらいな…』
アルの両親の事は良く知っている、自分に対してもパイロットである事を反対されたのだ、家族ぐるみの付き合いだからこそ遠慮が無い、アルをパイロットととして誘うのは無理だろうと確信していた、しかしアルと話しをする機会を得たのだ、バーニィーの事に決着を着けるつもりでいた




続きます