アキははっと我に帰り、男が握らせたお札を
財布へと閉まった。
「あの、すいません…それで、どうすればいいでしょうか」
男が答える。
「そんなこと聞かれるの初めてだよ。そうだね、少し話す?」
男はガラステーブルの上に置かれたライターを手に取り、煙草にゆっくり火を点けた。
「でも、あの時間が…。その…」
アキはどうせなら、早いところ終わらせてしまいたかった。
「うん?いいよ。焦らなくても、延長したっていいしさ」
延長…。
有加里から聞いた“イロハ”にはなかった言葉が出て来てしまった…。