学校に踏み込んだ「警察力」 いじめは次々と「事件」になった | hidヘッドライト 初めて実用化、hidヘッドライト アコードワゴン

hidヘッドライト 初めて実用化、hidヘッドライト アコードワゴン

hidヘッドライト 初めて実用化、hidヘッドライト アコードワゴンの最新情報。日が改まるので、こちらのサイト–hidヘッドライト 初めて実用化、hidヘッドライト アコードワゴン情報網をよろしくご配慮ください。

日が暮れてまもなく、「滋賀県警」と書かれた段ボール箱を手に、固い表情の捜査員が次々と中学校の校舎内に消えていった。大津市立中学2年の男子生徒=当時(13)=がいじめを苦にして自殺した事件。7月11日夜、遺族からの被害届の受理を拒否してきた滋賀県警が“豹変”し、中学校の家宅捜索に乗り出した。極めて異例といえる教育現場への直接介入、さらには学校側への責任転嫁とも取られかねない強制捜査に警察内外から疑問の声もあがった。だが県警が投じたこの一石が、いじめと警察のこれまでの流れを変え、その後、全国で「いじめ」という言葉に隠れていた子供たちの犯罪行為が警察によって次々とあぶり出された。

【フォト】 大津いじめ 滋賀県警が謝罪 3回の被害届「受理すべきだった」

■警察の学校不信

 事件の捜査は最初から迷走気味だった。平成23年10月に男子生徒が自殺して以降、父親は大津署に3度にわたって被害届を提出しようとした。しかし、同署は被害者が死亡していることを理由に受理を拒み続けた。県警は「いじめ問題には介入しない」という姿勢を崩さなかった。

 転機が訪れたのは24年7月初めのことだ。

 「自殺の練習をさせられていた」

 「死んだハチを食べさせられそうになっていた」

 自殺直後に学校が全校生徒を対象に行ったアンケート結果の内容が、遺族が加害生徒らを相手取った民事訴訟で表面化。壮絶ないじめの実態が次々と報道され、真相究明を求める声が急激に高まった。

 その勢いにせっつかれるように、県警は水面下で学校関係者から事情聴取を開始。アンケート結果など関係資料を任意提出してもらい、事実上の捜査を始めた。だが、この直後、県警が目をむく学校の“隠蔽”が明らかになった。

 「自殺の練習と言って首をしめていた」

 「葬式ごっこ…」

 7月10日夜、大津市教委が突然開いた記者会見で明らかにしたのは、23年11月に行った2回目のアンケート結果だった。1回目には書かれていない新たな証言が含まれていたどころか、2回目のアンケートの存在すら、県警には知らせていなかった。

 「市教委が警察に100%事実を伝えているのか、不信感を持った」。県警が前代未聞の家宅捜索に着手したのは翌11日夜のことだった。

 教育現場と警察の間には長く「学校内の事件事故は学校で対処する」という不文律が存在していた。このため、強制捜査に懐疑的な警察当局幹部も少なくなく、「学校に責任を全部押しつけるためか」と怒る教育関係者もいた。

■被害届も増加

 しかしこれ以降、流れは一変する。世論の高まりを受けた文部科学省はいじめ問題で警察との連携強化を打ち出し、警察も摘発を積極化。被害生徒からの被害届も増え、教育現場と警察の垣根は低くなりつつある。

 県警の捜索から2週間後、大阪府警は寝屋川市立中学3年の男子生徒(14)に髪を燃やすなどの暴力的行為を繰り返していたとして同級生3人を傷害容疑などで逮捕した。

 いじめが始まったのは、中学校1年生のころ。「パシリ」として使われては金をせびられ、ときに殴られた。気付いた学校はクラス替えなどの対策を講じたが、いじめはエスカレート。24年5月、男子生徒は殴る蹴るの暴行を受け、鼻を骨折する重傷を負った。ついに学校は寝屋川署に相談。ようやく刑事事件として警察の手に委ねられることになった。

 捜査関係者は「学校で対処できる範囲を超えていた。指導でも調査でもなく捜査が必要な犯罪行為だった」と振り返る。

 警察の積極介入という変化について、いじめ問題に詳しい東京学芸大教職大学院の今井文男特任教授(生徒指導)は「学校で許されないことは社会的にも許されない、という風潮が強まっている」と分析する。

 大津事件後に文科省が全国の小中高校を対象に実施した「いじめ緊急調査」では、24年4月以降の半年間で「子供の生命や身体を脅かす恐れのある重大ないじめ」は約250件報告された。今井特任教授は「被害者の命を守り、加害者がより重大な事件を起こすのを防ぐためにも、警察が介入するのはいい流れだ」と評価する。

■指導力低下を懸念

 だが安易に警察任せにすることは、教育現場の指導力低下を招く恐れもある。

 平成6年、次男の大河内清輝君=当時(13)=をいじめ自殺で亡くした父、祥晴さん(66)は警察の介入を評価しつつも「まずは刑事事件にまでならないように、学校で解決する努力を怠らないでほしい」と訴える。

 18年前、大河内さんの前で加害少年たちは「楽しかったからやった。遊びだった」と平然と言い放った。まるで罪の意識がないような様子に、大河内さんは「本当に『遊び』だったのだろう。だからこそ罪悪感なくエスカレートする子供のいじめは怖い」と強調する。当時学校の教師はいじめの現場を目撃していたにもかかわらず「けんか」と判断して放置。行為は残酷さを増していった。

 大河内さんは「警察が入ると学校は『警察が捜査中』を理由に責任逃れをしがち」と指摘。「事件化して終わりではなく、その後の子供のケアやフォローをするのは学校だという意識が大切だ」と話す。

 府警幹部も「摘発することで加害者を被害者から隔離することは、いじめを解消する方法として意味がある」としながらも、こうクギを刺した。

 「警察ができるのは一部の行為を犯罪として切り取ること。周囲が子供たちと向き合っていじめの残酷さを教えなければ、被害者の傷や加害者の心の闇はなにも変わらない」

 大津事件で学校現場に踏み込んだ滋賀県警の捜査は、いじめ問題に対する学校の認識や、いじめの加害者・被害者を変えることができたのだろうか。