Giampaolo Truffa Come una nuvola bianca | 美術作家鈴蘭のブログ

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Solo Exhibition-Come una nuvola bianca 


 長身の彼がゆっくり近づいて来る。物静かな風貌は、陽気なイタリア人というより むしろ、北イタリアの詩人の香りがした。

この人が、あの絵を描いたのか...。

思えば、初対面から最期まで、彼の表情に怒りを見ることは無かったし、声を荒げるのも聞くことは無かったのだから、あの作品たちは文字通り 彼、そのものなのだと独り言つ。

 幼い頃 その多くの時間を雲を眺めることに使ってきた私にとって、初めて会う彼の作品たちは、懐かしくもあり、また、一時すっかり忘れてしまった宝を再び見つけ出したような、ある種の悦びを感じさせるものだった。

 全ての人の上に天があり、その天にはゆるやかに雲が流れている。想起するのは 主祷文のはじめである。

この世に生きる人々に等しく、空に日は昇り、星がまたたく。それが空ってもの。丸ごとの世界ってもの。そこにひとすじのメッセージがあったとして、それは共通かつ個人的。つまり普遍なのである。Giampaolo の作品はそれを教えてくれる。

 空は刻々と変わり続け一瞬たりとも止まることなく動いている。

どこまでも軽く、上へ上へ、外へ外へ、無限に拡がる。

Giampaolo の空は パキーンと目がくらむようなものではない。

変わり続けるその形を止めて、少しだけ重さを与えてくれる。その雲の受肉はグレイッシュな落ち着きに表された。影である。そこではじめて雲からのメッセージを私たちは確認するのだ。

どこまでも純粋な彼の眼差しと、デリケートなだけではない積極的な神との対話を見る。

画面の中のやわらかな形と色は 鑑賞時間を重ねるとともに強さをおびてくる。この不思議はどこから来るのか。

おそらく、最初の内気な表情のせいで、全く押しつけを感じることなく 作品と正面で目を合わせて、対話をはじめることが可能になるからかもしれない。

そうして、彼の作品は観るたびに 新しい言葉を語りだすだろう。

生まれたての 白い雲のように。

                鈴蘭


2023 Doppia S Arte Contemporanea での展覧会に寄せて。





画像は全てトリノ(2018)













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