黒夜は大きく空振り、体勢を崩した。

 そんな隙を大柄の男が見逃すはずがなかった。黒夜の背中に痛い一撃を放った。

 大柄の男はその一撃で終わると思っていた。しかし、

「弾丸はとどかない」
 黒夜が小さな声で呟いた。

 黒夜は全てを理解したような表情で、再びナイフを今度は心臓目掛けて振り下ろした。

 ドッ、と鈍い音が廃工場内に小さく反響した。
「俺に鉛弾はとどかないよ、竹下」
 黒夜と大柄の男のちょうど中間あたりには一発の弾丸が落ちている。

 大柄の男は再び拳銃を構えた。

 黒夜はカチッ、という拳銃の引き金の音を合図に大柄の男との距離を詰めた。

 大柄の男の想像を超える速度で距離を詰めた黒夜は勢いのままに顔面にむかって握っていたナイフを振り下ろした。
 ドンッ、爆発音のような大きな音が廃工場内に響いた。と同時に

「誰だ、コラ!?」
 ドスのきいた男の罵声が聞こえた。

「あんたが俺のターゲットか?」
 黒夜は声の聞こえた方に質問口調で話しかけた。

 ターゲットの名前は竹下 一郎(タケシタ イチロウ)。190以上の長身で、常に拳銃を持ち歩いている殺人鬼。

 うっすら見えている人影は明らかに大柄な男のもので黒夜は確信していた。廃工場内にいた男こそが竹下だと、その時パンッ、という渇いた音が廃工場内を制圧した。