廃工場の前でタクシーは止まった。

 黒夜はタクシーを降りた。もちろん、ここまでの走行料金は払い終えている。

 黒夜が降りるとタクシーはすぐに走り出した。それを確認すると黒夜はナイフを片手に廃工場へと歩き出した。

 廃工場の少し開いているスライド式の鉄の扉は少し錆び付いていた。

 錆び付いた扉に触るのがイヤなのか、器用に靴を扉の少し開いている隙間に入れ、そのまま横に思いきり蹴り飛ばした。
 今日の仕事の場所は黒夜の住んでいるマンションから歩いていくにはちょっと遠い。黒夜はちょうどいいところでやってきたタクシーで移動することにした。

 タクシーに乗ると黒夜は目的地を告げた。

「なんでそんなところに行くんだい?」
 タクシーの運転手は黒夜が告げた場所に疑問をもった。見た目からも実年齢も高校生にしか見えない黒夜が告げた場所――廃工場。その廃工場はこの前殺人事件があったため有名になっていたのだ。他にも色々と噂があるがどれもイヤな噂しかなく、知ってる人なら誰も近寄ろうとしないだろう。

「いいから行ってくれ」
 この一言によりタクシー運転手はそれ以上の詮索はやめた。

 無言のままタクシーは廃工場に向けて走り出した。
 牛乳を飲み終えた、その瞬間にタイミングを見計らったかのように携帯が震え出した。

「仕事か」
 常時マナーモードの携帯を手にとる。

『仕事です、内容は――――です』
 電話を掛けてきた人の良さそうな声の主は簡潔に内容だけを告げるとプツリ、と電話を切った。

 黒夜は携帯電話をポケットにしまい、部屋を出た。