新幹線の改札で、さよならするつもりだった。
アヤが乗った電車が去っていくのを見送るのは辛いから。
だけどアヤの荷物が多かったから、
座席まで荷物を運ぶのを手伝うことにした。
電車の到着を待ちながら喫煙所で一服している間も、
アヤが時々哀しい顔をするから切なくなる。
だけどアヤはアヤで、
『今夜ユミさんはホテルで一人だから、
寂しくならないようにお友達と約束があって良かった。』
そう言って私のことを心配している。
少し離れた所で、アヤが仕事の電話をしている。
もし私がこのままアヤと一緒に新幹線に乗って行ったら、、、
もしアヤがこのまま東京に留まったら、、、
どうなるだろう?
ふと考えたけど、
その想像は膨らまず、ボンヤリとすぐに消えた。
電車を待つ時間は、
一緒に話しているのは楽しいけれど、
それは別れの時を待つ時間でもあり、
複雑な気分で落ち着かないひと時でもあった。
程なくアヤの乗る電車がホームに入ってきて、
アヤの座席まで荷物を運び込む。
「降りる時ちょっと大変だと思うけど、
気を付けてね。」
いよいよ別れの時を迎え、アヤの表情が一気に変わる。
「見送らないよ。
電車を降りたらそのまま行くから。」
『ユミさん…』
アヤはもうそれしか言えない。
目に涙を溜めて、もう溢れそう。
泣くのを堪えるその顔は、
私の心をキュッと締め付ける。
思わず私はアヤの肩を引き寄せ、
耳元に小さい声で囁いた。
「アヤ、愛してるよ。」
今の私には、この言葉を言うことしか思いつかなかった。
アヤが不安な気持ちに潰されそうな時、
どうか私の存在を感じて欲しい。
アヤが私の目を見てうなづく。
もう堪えていた涙は流れてしまった。
アヤ、、、次に会う時まで元気でいてね。
ホームに降りて、一度アヤに手を振り、
私はそのまま階段を下りていった。
階段を下りる背後で、
アヤが乗った電車の発車を知らせるベルが鳴っている。
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