今からちょうど7年ほど前のことです。
世間は楽しげな連休の雰囲気に
包まれていました。
日頃の忙しさから解放され
のんびりと過ごすはずだったその
連休中に、私の体に突如として異変が
起きました。
始まりは
「なんだか少し胃のあたりがおかしいな」
という、ささやかな違和感でした。
当時はまだ、体にそれほど大きな
病気が隠れているとは夢にも思っていません。
「まあ、ちょっと食べすぎたか
疲れが出たのだろう。
市販の胃薬でも飲んで一晩ゆっくり寝れば
明日にはすっきりと治っているはずです」
と、軽く考えていました。
薬を飲み、いつも通り布団に入ったのを
今でもよく覚えています。
しかし、現実はそんなに甘いものでは
ありませんでした。
翌朝、目が覚めても体調は一向に良くならず
それどころか時間の経過とともに
それまで経験したこともないような
激しい痛みが容赦なく私を襲ってきたのです。
胸の奥が焼けつくような
あるいは締め付けられるような
鋭い痛みでした。
「これは絶対に普通のおかしさではない。
ただの胃もたれや
食べすぎのはずがないです」と
恐怖に近い感情が込み上げてきました。
痛みに耐えかねた私は
家族にお願いして車を出してもらい
急患を受け付けてくれる救急病院へと
向かいました。
車内での時間は、痛みと不安のせいで
まるで永遠のように長く
感じられたものです。
ようやく病院に到着し、医師の診察を
受けることができましたが
そこで突きつけられたのは
もどかしい現実でした。
「今は連休中で、専門の検査を行う
体制が整っていません。
病院が閉まっている今の段階では
根本的な治療や詳しいことは何
もできないんですよ。
連休が明けたら、しっかりと予約を
取って精密検査をしましょう」
医師の言葉に、私は深い落胆と
不安を抱えたまま
ひとまずその場をしのぐだけの
応急処置を受けて帰宅するしか
ありませんでした。
あの連休中の、先の見えない不安に
苛まれた時間は、今振り返っても
本当に苦しいものでした。
連休が明け、待ちに待った精密検査の日が
やってきました。
生まれて初めて受ける胃カメラ検査や
超音波(エコー)検査は、緊張と
不安で体がこわばりましたが
「原因を知りたい」という一心で耐えました。
数々の検査を経て
モニターに映し出された画像を
見ながら医師から告げられた病名が
「逆流性食道炎」でした。
原因が分かり、少しホッとしたのも束の間
私は最も気になっていた疑問を
先生に投げかけました。
「先生、この病気は一体いつ頃になれば
治るものなのでしょうか?」
その問いに対する先生の返答は
私の期待を大きく裏切る
あまりにも衝撃的な言葉でした。
「この病気はね、根本的に完全
に治るということはないんですよ。
これからは一生、お薬を飲み続けて
胃酸の分泌を抑えていくしかないです。
そういう病気なのです」
「一生、毎日薬を飲み続けなければならない」
という言葉は、当時の私の心に
重くのしかかり、目の前が
真っ暗になるような絶望感を覚えました。
それからは、食道の粘膜に変異が
起きていないか、がんなどの重い
合併症に進行していないかを
監視するため、半年に一度という短い
スパンで定期的に胃カメラ検査を
受ける過酷な日々が始まりました。
あの苦しい検査を半年に
一度受けるというのは、精神的にも
肉体的にも決して楽なことでは
ありませんでした。
しかし、私は諦めませんでした。
先生の言葉を胸に刻み
処方されたお薬を毎日忘れずに
飲むことはもちろん、日々の生活習慣に
も少しずつ変化を加えていきました。
「食後すぐに横にならない」
「油っこいものや刺激の強い食べ物は控える」
「一度にたくさん食べすぎず腹八分目を心がける」
といった、胃に負担をかけないための
工夫を、何年も何年も地道に
積み重ねていったのです。
第1章終わります。
最後まで読んで頂き
ありがとうございます。