私は、1991年3月に、「我が子を中学受験で破滅させない法」(主婦の友社)という単行本で、文筆家としてデビューしました。
時あたかも、バブル経済が崩壊するその年でした。
その翌年以降、日本の多くの企業では、終身雇用・年功序列のシステムを放棄し、いかに稼いでこれる人材かで社員を評価するシステムへと順次シフトしてゆきました。
私が、上記の本を書いたときには、まだ終身雇用・年功序列が生きており、それと同時に、今と比べれば、まだまだ出身大学の序列(指定校かどうか)が採用や入社後の処遇に影響を残している時代でした。
しかし、私は、この時点で、すでに、「東京大学を頂点とする偏差値のピラミッドを駆け上がることにエネルギーを傾注する子供時代・思春期を送っても、社会に出てから、必ずしもそれが好ましい結果を生まない」ことを、同書において明確していました。
子供をそうした画一的な価値観の中に無理やり押し込めるのではなくて、むしろ世の中(の様々な価値観)を知るチャンスを子供に提供して、適性や本人の希望を生かす形で、将来イメージを形成する方が得策であることを、様々な実例から明らかにしました、
その当時、すでに大学入試の方法は多様化し、それまでのような学科試験は、相対的に減少し、論文入試、A.O.入試、一芸一能入試、帰国子女枠などなど・・・・様々な入り口が用意され、いろんな特性をもった子供を、広く入れていこうという方針が全国レベルで急拡大していることも、上記の私の主張を裏付けることとなりました。
お陰様で、私の第1作は多くの反響を頂戴し、実際、その後の日本の大学受験や企業の新卒採用は、私の指摘した方向に進んでいき、今では、東大を頂点とする偏差値ピラミッドが、ほとんど意味をなさない世の中になっています。
ところが、驚いたことに、世の中には、今なお、「東大神話」「学歴幻想」を信じて、社会を見、人を見、子供を見ている人が、少なからずいるらいしいことが最近わかり、これではいけない・・・・と思って、このブログでも、ほんの少しだけ、このテーマについて書いてみようと思った次第です。
私自身、東京大学の卒業生として、母校や自分の人生を否定するようなことには複雑な思いもありますが、だからと言って、世の中の現実に反するようなことを言ったり、知らないふりをする、ということはもっとできません。
文筆家として、私は、これまで、社会において自己実現を果たし、社会からも一定の評価を得つつ、自分自身もイキイキと輝いて仕事に打ち込んでいる若手・中堅の男女を、100人以上、取材してきました。
しかし、その中に、東大出身者は、たった1人しかいませんでした。
自分の母校でもあり、それなりに人脈もあるのですから、取材者数も自ずから多くなるはずなのに・・・・です。
さらに、国立大学という枠組みで見ても、一橋大学が2人、東京農工大と横浜国大と筑波大が各1人いるに過ぎません。
あとは、全員、私立大学、外国(米英)の大学、専門学校、高校の卒業者なのです!
主だったところを、抜粋すると・・・・・・
慶應大学4人
慶應大学(湘南藤沢キャンパス、通称SFC)5人
早稲田大学5人
日本大学3人
上智大学2人
法政大学2人
成蹊大学2人
国立音大2人
であり、あとは、全員、ひとつの学校あたり1名という分散ぶりです。
SFCが多いのは、この大学がA.O.入試をはじめとする非学科試験で入学できる余地が非常に大きいため、中学・高校時代に、部活とか趣味とか社会的な活動に情熱を燃やした子供にとっては、受けやすい大学だからです。
あと、早稲田・慶應や上智、日大に行った人たちも、東大に落ちて入ったのではなく、最初から、受験科目数が少ない私立狙いで受けた人たちで、彼らもまた、中学・高校時代に、授業以外の面で、のびのびと過ごした人たちなんです。
しかし、こういう風に言うと、決まって、こんな反論が来ます。
「でも、その人たちって、オリンピックに出場するようなスポーツ選手とか、国際コンクールで優勝するような音楽家とか、とにかく一部の特殊な人たちなんでしょう!?」
そんな特殊な人たちかどうかは、ちょっと調べれば簡単にわかることなのですが、そういう反論をする人たちに限って、調べようともしないのが、とても興味深い点です。
そもそもそんな特殊な人って、絶対数が決定的に少ないわけで、非学科試験で上記のような大学に合格する人たちっていうのは、もっともっと日常生活に密着したところで、年齢相応の活動(部活・趣味・奉仕など)に打ち込み、自分ならではの成果を収めてきた人たちです。
そういう人たちこそが、経済が低迷し、大企業の若手社員でもリストラの危機に晒されている現代日本にあって、仕事にも人にも恵まれて、結果として、経済的にも、プライベート面でも充実した人生を送っているという点は、見逃せません。
こうした「現実」を踏まえたところで、次回以降、「東大神話」「学歴幻想」について、具体的に検討したいと思います。