「目立っている症状」だけ見ると、「本当の困りごと」を見落としてしまう
――いろいろな原因や背景を探っていかなければいけないと。 そうしなければならない理由のひとつに、「目立つ症状だけにフォーカスして診断をつけてしまうと、あとで困ることがある」から。目立っていない症状が脳の特性に潜んでいることも多いんです。
――症状が隠れている場合があるんですね。たとえば、どういうことですか?
たとえば、「決めたルールを守りたがる」「こだわりが強い」面がフォーカスされて、ASDと診断されたとしましょう。でも、「こだわり」の原因となる要因はさまざまなんです。
ADHDの子もこだわりを持っているように見えることがあります。これは、ADHDの子が、そもそも人の感情や場の空気に影響されやすい気質のため、「ルール」を持つことで、その場その場で流されないようにしている場合があります。自分の弱い部分を守るための、対策なんですね。
なかなか、支援の先生も通常学級はずっとは見てないので、気付きにくく不登校になりがちなのが、やっぱり女の子のカモフラージュタイプですね。
友達との約束を忘れて、関係が悪くなったりもしますね。。。たまにではない頻度の時は、注意が必要ですね。
「学校終わったら、◯◯公園に集合ね!」「明日は、◯時に集合して一緒に学校に行こうね!」「◯◯を本貸してね!」などの約束を頻繁に忘れたり、遅れると、女子グループには嫌われる心配があります。2年生ぐらいまでなら問題なくても、3年生からはかなり言われてしまいます。
可能なら、メモを取れたら良いのですが。。。
女の子に「隠れADHD」が多い理由
デンマークのダルスガードらの研究によると、ADHDでは、女の子のほうが9年間も発見が遅れるとされています。男の子は最初の受診が平均すると8歳なのに対し、女の子は17歳となっています。これだけの開きがあるのは、なぜだと思いますか?
――女の子に目立つ症状が出にくいからでしょうか…?
はい、男の子のADHDに出やすい「多動」は目に見えてわかりますし、問題になりやすい。授業中に教室をウロチョロしたり、落ち着いて授業を受けられなかったりすると、先生も問題視しますよね。
それに比べて、女の子のADHDは「多動」が少なく、「注意欠陥」が多いことが目立ちます。そうなると、おとなしく授業を受けてくれるので、学校での問題が大きくなりづらいのです。
――なぜ、女の子は17歳ごろになって受診するのですか?
注意欠陥が招く問題、たとえば「ケアレスミス」だとか「忘れ物」「約束を忘れる」など、幼いころには「まだ小さいから」と許されることも多いです。ですが、大きくなってきてもまだ「自発性に乏しい」「自分が積極的に人に話しかけることはない」「受験の日に受験票を忘れる」などが出てきてしまうと、人間関係や生活面に大きく影響してきます。
――社会に出てから必要な力が足りないことで、社会に出る時期になって「困りごと」が出てきていまうんですね。
そのとおりです。その意味では、女の子に「隠れたADHD脳」が多く、早期にサポートを受けられない現状があります。本人のなかでは「ずっと困っている」んですから、本当はもっと早く気づいてあげて、相談に乗ったり、生活しやすいようにサポートしてあげることが必要なのだと感じます。