むかーしむかし、ハイチュウキングがおりました。ハイチュウキングは大きなお城に住んでいました。何一つ不自由な生活をしたことのないハイチュウキングは、『苦労』というものを知りませんでした。しかし、その時、国は大変なことになってしまいました。

 ある日、お城に一人の兵士が来ました。そして、兵士は、王、ハイチュウキングの父にこう言いました。

「王、私はもうあなたについていけません。これは、我々兵士がずっと思い続けていたことです。我々は戦いに負け、国は、もうボロボロです。家族も今やバラバラに、何処にいるのかすら、わからなくなってしまいました。唯一助かったのは、王宮の中にいたあなた方だけ。我々兵士は、王のため、王のためと必死で戦い続けました。けれど、王、あなたは国を捨てたのです。兵士が必死に戦い続けている中、あなた方王族は・・・。もう、こんな王について行く義務はありません。もうこの国から出て行きます。それでは失礼!」

兵士は行ってしまった。王は、ずっと顔をしかめていたが、ハイチュウキングだけは泣いていた。私の父が国を裏切ったりするはずがない。と、心の中で、ずっと思っていた。幼い頃から憧れだった父がこんな人だと思っていなかった。ハイチュウキングは静かに自分の部屋へ帰って行った。

つづく