COMPRÉHENSION DES QUESTIONS ET POUR MIEUX APPRENDRE
(問題のあらましと学習のポイント)
前回取り上げた問題1と同じく、フランス人の日常的に目にする新聞あるいは雑誌の記事の抜粋(二十行前後、語数にして三~四百語)を教材に、テクストの内容理解を問う。配点は、2-1(前置詞の穴埋め)、一問につき一点×五問=五点、2-2(仏文和訳)、五点、2-3(仏文和訳)、五点、合計十五点。今年度は、niponicaなる、外務省の編纂する外国人向け広報用小冊子の第十三号(二〇一四年)に掲載の、静岡県富士宮市における山葵の栽培に関するテクストを教材とする。問題に向き合うにあたり、必要とされる技能は、前回取り上げた問題1とあまり変わりない。とはいえ、今回取り上げる問題2は、前回言及した、大意把握の技能を基盤に、精読の技能、より詳細に言えば、初~中級に至る基本文法の理解が問われるのである。昨今の外国語学習の眼目たる会話は、とどのつまり、フランス語を用いなければ生きることさえまゝならぬ環境に身を置けば、三ケ月もすれば間違いなく「身につく」のだが、基本文法は、丹念なる反復的学習を通し「身につける」ものである。ゆえに、基本文法の理解を問う問題は、実用フランス語技能検定試験(仏検)をはじめ、屢〻御目見得するのである。
CORRIGÉ(解答)
2-1 (ア)b (イ)e (ウ)d (エ)c (オ)a
2-2 山中の、小川の流れる中に、山葵が野生の状態で生えていようとも、あるいは、狭い谷間で山葵が栽培されようとも、「山葵」は、とても澄んだ、そして流れる水を必要とする。
2-3 大雨の際、そこゝゝの川は泥に溢れ、それはつまり、(山葵の)根を変色させるということだ。ゆえに、適切な措置を講じ、そして、必要とあらば、水流量を制限することが重要である。
2-1(前置詞の穴埋め):(ア)空欄の直後にある語wasabiに冠詞のないことに注目。日常的に用いる熟語あるいは成句的表現を除き、無冠詞の名詞を伴える前置詞は、選択肢(b)のsansと選択肢(d)のenだけである。とはいえ、様態を示す前置詞enを用いた場合、山葵は「添えられた」状態となり、第一文冒頭の言及Comment imaginer [...]([前略]どう想像すれば良いか)と論理的に合わない。ゆえに、正答は、選択肢(b)のsans。
(イ)第六文後半は、富士山に降り注ぐ雨水と雪溶け水のゆくえに関する記述だが、前半部の言及s'infiltrent lentement dans le sol(ゆっくりと地面下に浸透し)と後半部のそれfinalement jaillir à basse altitude(しまいには、標高の低い地点で湧き出る)の関係を考えれば、正答は、すぐに導けるだろう。後半部冒頭の副詞finalementに注目。正答は、選択肢(e)のpour。
(ウ)基本的な語彙の結びつき、riche en+無冠詞名詞(…に富んだ)の理解を問う。正答は、選択肢(d)のen。
(エ)日常的表現de(あるいはd'une)manière+形容詞(…なやり方で)の習熟を問う。正答は、選択肢(c)のde。
(オ)名詞obstacleに対する前置詞à(…に対する)の結びつきの理解を問う。正答は、選択肢(a)のà。
2-2(仏文和訳):第四文々中の接続詞queは、様〻な意味の接続詞(句)と同等の働きをする。この接続詞queの、文中におけるじっさいに担う役割は、コンテクスト、つまりは文脈に依拠するが、この文脈における接続詞queは、言うなれば、接続詞句soit que+subj., soit (ou) que+subj.(…するにせよ…するにせよ)に相当する。語彙、構文はいずれも平易、ゆえに、接続詞queの用法に気づきさえすれば、和訳はすぐに書けるだろう。解答例は、「山中の、小川の流れる中に、山葵が野生の状態で生えていようとも、あるいは、狭い谷間で山葵が栽培されようとも、「山葵」は、とても澄んだ、そして流れる水を必要とする」。
2-3(仏文和訳):第十五文後半の関係代名詞quiの先行詞たる指示代名詞ceは、前の文(Lors de grosses pluies, les rivières deviennent boueuses)の内容全体を受ける。これを念頭に、第十六文の非人称構文Il importe de+inf.(…することが重要である)に注意を払いつつ、和訳しよう。また、第十六文々末のle cas échéant(必要とあらば)なる日常的表現にも注目。解答例は、「大雨の際、そこゝゝの川は泥に溢れ、それはつまり、(山葵の)根を変色させるということだ。ゆえに、適切な措置を講じ、そして、必要とあらば、水流量を制限することが重要である」。
(参考)TRADUCTION
「山葵」のない「刺身」あるいは「握り鮨」をどう想像すれば良いか。「刺身」という、生魚の薄切りを山葵醤油に浸せば、醤油に溶けた、ほんの少しの「山葵」は、人〻の味蕾を喜ばせ、米と魚の間に、薄く層のように山葵を広げれば、「握り鮨」につんとくる風味を与える。山葵は鼻腔を刺戟し、魚臭さを消し、そして、味を引き立たせる。
山中の、小川の流れる中に、山葵が野生の状態で生えていようとも、あるいは、狭い谷間で山葵が栽培されようとも、「山葵」は、とても澄んだ、そして流れる水を必要とする。富士山麓のある数地点は、「山葵」で名高い。山、それじたいは不毛で、川一つ、池一つ、そこにはないのだが、雨水と雪溶け水は、ゆっくりと地面下に浸透し、しまいには、標高の低い地点で湧き出るのである。こうした水は、すべて、いくつもの川や池の水源となっている。
富士山の水は、無機物が豊富であり、「『山葵』には理想的です」と説明するのは、静岡県富士宮市で「山葵」農園を経営する杵塚眞美女史だ。植物は、火山の珪質岩の混ざった砂地質の土壌に生える。心土に流れる水の温度は、一年を通して十~十一度と一定している。植物は、十八~二十四ケ月で開花に達し、そして、山葵の白い花の御目見得は、その根が、収穫するに十分に適する時期とのしるしだ。この生産方式においては、年間を通した収穫を可能にするために、段階的に(山葵を)栽培するのである。
大切なのは、水の温度と流量を一定に保つことである。屑や雑草といった、水の流れを妨げるものは、すべて、すぐさま取り除かれなければならない。大雨の際、そこゝゝの川は泥に溢れ、それはつまり、(山葵の)根を変色させるということだ。ゆえに、適切な措置を講じ、そして、必要とあらば、水流量を制限することが重要である。