前回は、古代ギリシア・ローマに始まる共和政の歴史を振り返りつつ、それら共和政の行き着いた先にありし限界を具に観察することで、フランス革命の齎した現代的共和政とは何か、また、それを特徴づけ、且つ価値づける特質に思いを至らせ、現代的共和政のもつ意義を改めて考える条りを読みました。今回、目を通すテクストは、現代的共和政の成立に寄与した人達の、百十年前(講演当時)に取った行動に着目しつつ、その意義に思いを馳せるとともに、その定着に至るまでには様〻の困難のあったことを筆者(辯者)は語り始めます。

 

 

【第七段落(前半)】

 

      Les hommes de la Révolution en avaient conscience. Et lorsque dans la fête du 10 août 1793, ils célébrèrent cette Constitution, qui pour la première fois depuis l'origine de l'histoire organisait dans la souveraineté nationale la souveraineté de tous, lorsque artisans et ouvriers, forgerons, menuisiers, travailleurs des champs défilèrent dans le cortège, mêlés aux magistrats du peuple et ayant pour enseignes leurs outils, le président de la Convention put dire que c'était un jour qui ne ressemblait à aucun autre jour, le plus beau jour depuis que le soleil était suspendu dans l'immensité de l'espace ! Toutes les volontés se haussaient, pour être à la mesure de cette nouveauté, héroïque. C'est pour elle que ces hommes combattirent et moururent. C'est en son nom qu'ils se décimèrent. Et ils concentrèrent en elle une vie si ardente et si terrible, ils produisirent par elle tant d'actes et tant de pensées, qu'on put croire que cette République toute neuve, sans modèles comme sans traditions, avait acquis en quelques années la force et la substance des siècles. Et pourtant que de vicissitudes et d'épreuves avant que cette République que les hommes de la Révolution avaient crue impérissable soit fondée enfin sur notre sol ! Non seulement après quelques années d'orage elle est vaincue, mais il semble qu'elle s'efface à jamais de l'histoire et de la mémoire même des hommes.

 

      フランス革命に関わった人達は、そのことを自覚していました。そして、一七九三年八月十日の祝祭の折、この人達は、この共和政憲法を祝したのでありましたが、その共和政憲法とは、歴史上で最初の、国民主権の下でのあらゆる人〻による絶対的支配を確立したものであり、職人や工員、つまりは鍛冶屋であるとか指し物師、野良仕事に勤しむ人〻が、庶民出の行政官を巻き込んで、自分達のもつ生産手段を旗印として、隊列に次〻と加わったとき、国民公会の議長は、今日は、他のどんな日とも違う一日であり、宇宙という、広大な空間のなかに、太陽というものがおかれてからというもの、最も素晴らしい一日である、と言い得たのでした。あらゆる意志は湧き上がり、この大胆な、新しい政体に見合うものとなったのでした。この人達が、戦い、そして亡くなっていったのは、この新しい政体のためでした。この人達が、互いに殺し合い、屍の山を築き上げた大義名分もまた、共和政でした。そして、この人達は、あまりにも熱く激しく、そしてあまりにも凄まじい生を共和政に収斂させ、また、共和政なるものを介して、とても多くの行動や思考を生み出したので、まったく新しい、手本もなければ過去の習わしもないこの共和政は、数年にして、幾世紀にも亘る力と実体を得たと思い至れたのでした。とはいえ、フランス革命に関わった人達が、不滅なるものと考えた、この共和政が、とう/\われ/\の住まうこの土地に打ち立てられしそれ以前に、盛衰に直面し、苦難に喘いだことは、どれほど多くあったことでしょうか。この波乱の数年後に、共和政は打ち倒されることとなったばかりではなく、共和政は、永遠に、歴史や人間の記憶そのものから消え去ってしまうと思われたのです。(私訳)

 

 

 まずは、語学的な解釈に関する指摘をひとつ。第二文々中のこの表現にご注目いただきたい(下記引用文中、括弧書きの字母は、この後の注釈を容易にするために、私の附したものである)。

 

   [...] lorsque artisans (A) et ouvriers (B), forgerons (C), menuisiers (D), travailleurs des champs (E) défilèrent dans le cortège, [...]

 

 この文の主語は、少々長くartisans et ouvriers, forgerons, menuisiers, travailleurs des champsの、五つの列挙された(どの語も冠詞が省略されている)名詞であるが、これらの語の相互関係をどう捉えればよいか。初級段階は勿論、中級段階の学生でさえ、この五つの名詞を並列させ、A et B et C et D et Eと考え、和訳する。とはいえ、前述の解釈は、フランス語の基本的な文法に従えば、あり得ない訳出となろう。なぜならば、三つ以上の語(あるいは表現)を等位接続詞etを用い、並列させるときは、最後に締めとして一回だけ、etを挿入する。つまり、前述の解釈をとるためには、語順はA, B, C, D et Eでなければならないはずである。ところが、上記の引用文中における語順は、A et B, C, D, Eとなる。これは一体、どう解釈すべきか。この文のように、冠詞を附さず複数の名詞を並置するときは、属辞的同格の用法をまずは疑う。つまり、ここでは、(A et B), C, D, Eという四つの語句は、各〻対等であり、これを数式のごとく書き示せば、A et B=C=D=Eとなろう。要は、A et BとC、D、Eは、いずれも同じものを指し、より簡潔に説明すれば、C、D、EはA et Bの具体例の提示なのだ。ゆえに、和訳する際は、この相互関係を示す語句を補い、「AやB、つまりはCやD、Eのような」や「AやB、たとえばC、D、E」のように訳せばよい。等位接続詞etは、初級文法の教科書にも屢〻御目見得するお馴染みの語だが、それゆえに、注意を等閑にすると思わぬ読み違えをしたりする。くわばらくわばら。

 

 さあ、テクストの内容を俯瞰的に眺めよう。筆者(辯者)は、様〻な言葉を巧みに操り、また、le président de la Convention(国民公会の議長)の言葉を引用し(こうした引用をさりげなくこなすあたり、やはりジョレスは稀代の演説の名手なのだ)、フランス革命により齎されし現代的共和政に対し最大級の賛辞を送るが、この中で、筆者(辯者)は、souverainetéなる語を反復的に用いることで(第二文)、現代的共和政のもつ特質のひとつ、la souveraineté nationale(国民主権)の意義を強調する。筆者(辯者)によれば、la souveraineté de tous(すべての人〻の主権)は、国民主権のdans(枠内)で整えられた(organiser)という。つまり、筆者(辯者)は、国民主権をすべての人〻の主権よりも上位のものとして、否、文脈を鑑みれば、至高のものとして捉えていることが理解出来よう。

 

 だが、第六文を境に筆者(辯者)の論調は大きく変わり、華〻しく姿を現し、短期間の内に人口に膾炙した現代的共和政の味わうこととなった幾多もの困難に筆者(辯者)は言及する。とくに、語り始めの第六文は、少々構文の取り難い文章と思われるゆえ、最後に一寸だけ説明を(下記引用文中の下線や括弧、文字修飾は、私の附したものである)。

 

   Et pourtant que de vicissitudes et d'épreuves (avant que cette République [que les hommes de la Révolution avaient crue impérissable] soit fondée enfin sur notre sol) !

 

 まずは、文章中に三つある、que(斜体字)なる語を解明しよう。一つ目のqueは、感嘆の意を示す副詞、二つ目のqueは、接続詞句avant queの一部をなす、つまり接続詞、三つ目のqueは、cette Républiqueを先行詞とする関係代名詞。つぎに、文章中に二つある、動詞の叙法と時制を確認しよう。まずは、関係詞節にある一つ目の動詞croire、直説法複合過去形。ただし、過去分詞cruは、先行詞cette Républiqueと性・数一致しcrueとなる。また、直後の形容詞impérissableは、先行詞cette Républiqueの属詞。つまり、和訳は「…が…であると思う」(croire+名詞[ここでは先行詞]+属詞)とすればよい。つぎに、副詞節にある二つ目の動詞fonder、接続法現在形、受動態。接続詞句avant queは、続く節中の動詞に接続法を要求する。最後に、文章全体の修飾被修飾関係を考える。[   ]内の関係詞節は先行詞cette Républiqueを修飾し、(   )内の副詞節は、文修飾副詞として、文章全体の背景状況を補足的に説明する。