卒業した翌日から俺は働き始めた。

会社の上司の多くは「団塊の世代」と呼ばれる年代の人達だった。

学生の頃、周囲の年上と言えば親や先生、先輩などで、自分よりは間違いなく優れているし俺には必要な存在だった。

すぐに違和感が襲った。

「無能で無用な大人」との出会いだった。

この人達は会社が成長するときにリンクして成長してきた。 

社長が俺に言った。

「時代が良かった。会社は人材と時代によって成長してきたが、彼らは時代に恵まれた。」

そんな人達がこの国の産業、経済を支えてきた。しかしこれから会社にとってこの人達が「現役」でいることは「減益」の大きな要因になるだろう。日本人の優れた能力のひとつに「勤勉」が挙げられるという。

それは学校教育の賜物だろう。子供は学校組織や時間割の中で成長し、自然な形で対人との協調を身に付けた。

周りと違うことは除外、排除を意味した。役割分担が明確にされ与えられた状況の中、それが管理された状況だとしても、その中で皆と楽しく過ごすことや、充実感を得ることも自然に身に付け、そしてそこに満足感を得た。

教育がこの国を発展させた。しかし教育は変化して来ている。プラスαの授業も取り入れられ、ゆとり授業や休日も増えた。学歴社会が作った教師による学問と言う授業、周りとの違いも「個性」として受け入れられるようになった。学校の中でいじめを受けないよう自分を偽り、子供には必要の無いウソをついての状況回避も出来るようになった。

殴り合いのケンかをする状況にもならない。運動能力は昔と比べ落ちているが生きていくには問題は無いだろう。

コンピューター、インターネット、溢れるモノ、情報は一人の時間を確実に増やしている。

その時間が個人を作る。

でもそれは一人ぼっちの時間ではない。モニターや携帯電話の向こうには多くの相手が存在する。そんなやり取りの中、思考能力、あらゆる状況において自分を活かせる場所を探す能力は確実にアップしている。

反面、どうしたら良いか判らない時は、占いに判断を委ね自分の不甲斐無さは時代のせいにするズルさもある。

多くの知識、情報を得ることは望む限り可能だ。

産業、経済を左右するのは全体数の5%だという。それは違う業界、行政、世界全体、大小に関わらず会社組織などに当てはめてみても複数の人がいれば、状況を作っているのはそのなかの5%だということらしい。

しかしこれからは5%以上の有能な人材が日本の中に出てくるだろう。

そして新しい時代が来る。

彼等は欧米の思考や文化も自分の思考の中に取り入れ芸術や音楽も良質なものに恵まれ、感性も豊かだ。

上昇志向の若者は心理学や帝王学まで得とくし社会に出てくるだろう。「知識」は覚えることによって「教養」になり活かすことによって「知恵」となって身につくというがそんな話も意味が無くなってくるだろう。

冒頭の会社で俺が技術的面で困って先輩に相談したとき「自分もお前と同じ時期、同じ問題に直面した。

答えを教えるのは5分で済むがその問題を解決するため自分は何年も時間が掛かった。

自分で答えを見つけ出せ」と。

問題に直面し体験して、解決する時間を費やし「知恵」を身につけることで今までは良かったのだろう。

だが時代が違う。

モノが無くてほとんどゼロの状況からモノを作り上げてきた「過去」の何十年と「これから」とでは時代のスピードが全然違うのだ。

結局、問題はその日のうちに自分で解決した。

経験も無く知識ばかりで頭でっかちの彼等に何が出来るのかと自信満々だったり、過去の失敗談や苦労話を美化してばっかりの大人達は、間違いなくここ数年内に打ちのめされるだろう。彼等は問題の解決方法はどこに在るか直ぐに探し出せるだろうし、その問題に直面する前に回避するだろう。

脳にメモリーされるあいまいな「知識」の記憶も彼等はコンピューターを使い瞬時に、しかも確実に引き出すだろう。そして知識を使いこなし、「知恵」も豊富に身に付ける。

専門以外では四則演算しか暗算を使わないこともすぐに知るだろう。その計算も、かつて算盤、計算機を使っていたが今ではコンピューターで一瞬に答えがはじき出される。彼等は過去の出来事をデータベース化し、組織の中で新たな計画や販売戦略を求められたとき、そのデータベースからすべてのリスクが排除した場合、逆にリスクをすべて受け入れる場合、感性などありとあらゆる方向から新しいものを導き出すだろう。

ただ彼等すべてが「人財」ではない。

入社試験や面接の少ない時間で、その才能を知ることは難しいだろう。そんな彼等を受け入れる社会はどう変わっていくのか。

医療や介護、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚に訴えるビジネスは今以上の発展をするだろう。

しかし生活を変えるようなモノ、サービスは、もう生まれることは無いだろう。

今あるモノ、サービスをもっと便利にする副産物と、無くなる資源を防ぐことがこれからの大きな柱になるだろう。ここまでハードの面が充実した現代に於いてソフトの面が重要になるが、モノの販売方法のようなソフトの一面は店舗販売、通信販売、訪問販売など今存在する以外の方法はもう考えられないだろう。

既存の会社は今までと同じ経営内容では発展どころか維持すら出来なくなるだろう。企業の統廃合、新分野への進出は昨今珍しい事ではないが、それは企業維持が目的なのだろう。

続く…(といいけど)