福井日銀総裁:今後の情勢さらに見極めるのが適当-現状維持で(4) (ブルームバーグ) | 0330

福井日銀総裁:今後の情勢さらに見極めるのが適当-現状維持で(4) (ブルームバーグ)

福井日銀総裁:今後の情勢さらに見極めるのが適当-現状維持で(4) (ブルームバーグ)

2007年1月18日(木)18時54分


1月18日(ブルームバーグ):日本銀行の福井俊彦総裁は18日午後、定例会見で、同日開いた金融政策決定会合で現状維持とした背景について、経済・物価情勢は「生産・所得・支出の好循環のメカニズムが維持される下で、見通しにおおむね沿って推移する可能性が高い」としながらも、「このところ強弱さまざまな経済指標が出ているのも事実であり、今後の経済・物価情勢をさらに見極めていくことが適当という結論に至った」と語った。

福井総裁は現状維持の決定に3人の反対があったことについて、これらが利上げ提案であったこと、さらに、3人の正副総裁は現状維持に賛成したことを明らかにした。また、9人の政策委員の中で、消費や物価に対する見方に「わずかな判断の差」があったとしながらも、「経済、物価の先行きがおおむね見通し通り推移する可能性が高い、という点では完全に一致した」と述べた。

今回の現状維持の決定に政治圧力が影響しているのではないか、との質問に対しては「経済、物価以外の要素が入り込む余地は全くない」と言明。政府に対して利上げがないことを事前に連絡したとの一部報道についても「事実無根だ」と語った。

徐々に金利調整に変わりない

福井総裁は経済・物価情勢について「足元は幾分下振れているが、先行きの見通しはおおむね従来通りの方向に沿って推移する可能性が高い」と指摘。そのうえで、先行きの金融政策運営について「極めて低い金利水準による緩和的な金融環境を当面維持しながら、経済・物価情勢の変化に応じて徐々に金利水準の調整を行うという、これまでの基本的な考え方に変わりはない」と述べた。

福井総裁はさらに「具体的な政策については、経済・物価情勢の変化に応じて行う。あらかじめ何らかのスケジュール観を頭に置いて考えていくということではなく、経済・物価情勢の変化に応じて行う」と強調。「毎回の金融政策決定会合で、今後の経済・物価情勢を丹念に点検し、委員の間で十分に議論して、適切に判断していきたい」と語った。

福井総裁はまた「いたずらに判断を急いだり、いたずらに延引せず、的確に判断し、確証を持てればいつでも行動する」と述べた。

意見の違いは「多少」

政策委員で政策判断が分かれたことについては、「先行きをみた場合、生産・所得・支出の前向きの好循環のメカニズムが変わっていない。そのがい然性が高いという点では完全に一致している」と指摘。そのうえで「今回で十分判断できるという方と、追加的に情報を蓄積して分析を重ね、全体を再構築し、さらにもう少し丹念に検討を加えようという方との差ということだ」と語った。

福井総裁はさらに「これをさらに丹念に確認していく必要があるかどうか、あるいはまた、その時間的余裕があるかどうか、というところで、現在、委員の意見が多少分かれている。こういう段階に来ている」と述べた。

物価上昇率が下がったから利下げ遠のくわけではない

福井総裁はまた、消費者物価指数について「物価上昇率が低くなったから、利上げが遠のくのか、そんな単純なものではない」と指摘。「油の値段が下がれば、表面的な物価指数が下がっても、経済全体にとってはプラスの面が大きいかもしれない。そうすると、前向きの循環メカニズムが一層強く働くかもしれない。経済のバランスが一層良くなるかもしれないという面もある」と述べた。

福井総裁は一方で、「そうではなくて、やはり人々の物価安定感が損なわれるというような物価の下がり方かどうか。いろいろな角度から点検しないと判断が出ない。1つの指標が強いからすわっ、弱いからすわっ、そういう行動を取られる方は自由だが、われわれはもう少しスクリーンにかけた上でのコミュニケーションを望んでいる」と語った。

市場のかく乱要因にはなっていない

日本の低金利が金融市場のかく乱要因になっているのではないか、という質問に対しては「今のところ、日本経済の金利の水準については、表面的な比較では、世界各国と比べて非常に低い水準になっていると思うが、長年のデフレスパイラルに陥るリスクを危ぐしながら運営してきた経済であり、経済全体としても前向きのスタンスで経済運営ができるようになったまだ初期の段階だ」と指摘。

そのうえで、「今の段階で、かなり緩和的な金融環境を金利水準の面から提供していることは、整合的なことではないか。したがって、将来の方向としては、これは緩やかに調整していくということであり、そのことを市場にも十分理解していただくということで、市場に対して今、格別、日本の金融政策がかく乱的な影響を及ぼしているとは認識していない」と述べた。

主な一問一答は次の通り。

――本日の金融政策決定会合で現状維持とした背景を説明いただきたい。

「背景となる経済情勢は、輸出は海外経済の拡大を背景に増加を続けている。国内民間需要も増加基調を維持しているという判断だ。そのうち設備投資は、企業収益が高水準で推移する下で、引き続き増加している。雇用・所得の面では、雇用者数は増加しているが、賃金の伸びは緩やかなものにとどまっており、雇用者所得は緩やかな増加となっている。こうした下で、個人消費は引き続き、やや伸び悩んでいるが、基調としては増加していると判断した」

「このような内外需要の増加を背景に、生産は増加を続けており、在庫も電子部品デバイスなど一部を除けば、おおむね出荷とバランスしている状態にある。物価の面では、国内企業物価は国際商品市況の反落が影響して、3カ月前比で弱含んでいる。目先、弱含みないし横ばいで推移すると判断した」

「消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)の前年比上昇率は、石油製品価格の影響もみられるが、プラス基調で推移している。先行きもマクロ的な需給ギャップが需要超過方向で推移していく中、プラス基調を続けていくと予想している。こうした経済・物価情勢の判断を基に、本日は昨年10月の展望リポートで示した経済・物価情勢の見通しについて中間評価を行った」

「まず、わが国の景気については、見通しに比べて、これまでのところ天候要因など一時的な特殊要因もあって、個人消費を中心に幾分下振れていると評価した。これにはGDPの2005年度計数の改定によって、06年度への発射台が 0.3%ポイント縮小した、つまりゲタが0.3%ポイント低くなったということも影響している。景気の先行きについては、生産・所得・支出の好循環のメカニズムが維持される下で、従来の見通しにおおむね沿って推移すると予想される」

「物価の面では、国内企業物価は国際商品市況反落の影響などを背景に、見通しに比べ、幾分下振れると見込まれる。消費者物価については、見通しに比べ、これまでのところ原油価格反落の影響もあって幾分下振れているが、先行きは見通しにおおむね沿って推移すると予想される」

「わが国の経済・物価情勢は見通しに比べ、これまでのところやや弱含みで推移しているが、先行きについては、生産・所得・支出の好循環のメカニズムが維持される下で、見通しにおおむね沿って推移する可能性が高いと判断した。ただ、このところ強弱さまざまな経済指標が出ているのも事実であり、今後の経済・物価情勢をさらに見極めていくことが適当という結論に至った次第だ」

――今後の金融政策についての見解をうかがいたい。

「本日の会合では、10月の展望リポートの中間評価を行ったが、経済・物価情勢については、展望リポートの見通しに沿って、幾分、幾分下振れているが、生産・所得・支出の好循環のメカニズムが維持される下で、先行きはおおむね見通しに沿って推移する可能性が高いという判断だ。つまり、足元は幾分下振れているが、先行きの見通しはおおむね従来通りの方向に沿って推移する可能性が高いという判断だ」

「したがって、先行きの金融政策運営については、極めて低い金利水準による緩和的な金融環境を当面維持しながら、経済・物価情勢の変化に応じて徐々に金利水準の調整を行うという、これまでの基本的な考え方に変わりはない。こうした基本的な考え方に立って、具体的な政策については経済・物価情勢の変化に応じて行うということだ。あらかじめ何らかのスケジュール観を頭に置いて考えていくということではなく、経済・物価情勢の変化に応じて行う」

「毎回の金融政策決定会合で、今後の経済・物価情勢を丹念に点検し、委員の間で十分に議論して、適切に判断していきたい。本日もまさに、こうしたスタンスのうえで、利用可能なあらゆるデータを基に丹念に点検し、委員の間で十分議論したうえでの結論とご理解いただきたい」

――反対した3人はなぜ利上げを主張されたのか。

「概して言えば、これまでのシナリオと照らして経済・物価情勢の変化をみた場合、少なくとも現状を出発点として先行きをみた場合、生産・所得・支出の前向きの好循環のメカニズムが変わっていない。そのがい然性が高いという点では一致しているが、今回で十分判断できるという方と、追加的に情報を蓄積して分析を重ね、全体を再構築し、さらにもう少し丹念に検討を加えようという方との差ということだ。そういったところから差が出ている」

――日銀はフォワード・ルッキング(先見的)といっているが、バックワード・ルッキングになっているのではないか。

「フォワード・ルッキングなスタンスには、いささかも揺らぎはない。ただ、フォワード・ルッキングと言っても、手前の指標をいっさい無視して、遠眼鏡で先々を想像によって判断する、ということでは絶対にない。あくまでその時点までに利用可能なあらゆるデータを分析し、将来の方向性についてのインプリケーションを引き出し、それを将来の経済の全体の姿として再構築しながら判断していく。これがフォワード・ルッキングなプロセスだ」

問題は、データをどう分析し、先々につなげてどう読むか、ということであって、そういう意味では、われわれは丹念に分析し、分析結果については市場に的確にお伝えする努力をしてきている。われわれがスケジュール観を持って政策行動を予定しているのではないので、その点について、いっさい示唆的な情報を日銀から差し上げていないことも事実だ」

――さらに丹念に分析を重ねるというが、今後は何に焦点を当てて検討していくのか。たとえば、消費者物価も原油相場次第でマイナスになる可能性もあるが、単月でマイナスになったら利上げはできなくなるようなことがあるのか。市場は今、日銀が何をみて判断しているのか分からなくなっている。

「基本的には、先行きの経済・物価情勢について、生産・所得・支出の好循環のメカニズムが維持されている下で、おおむね展望リポートの見通しに沿って推移する可能性が高い、というのが基本的な判断だ。ただ、それは可能性が高いという判断であり、これをさらに丹念に確認していく必要があるかどうか、あるいはまた、その時間的余裕があるかどうか、というところで、現在、委員の意見が多少分かれている。こういう段階に来ている」

「今後とも、さまざまな経済指標が出てくる。たとえば、米国をはじめとする海外経済の状況にしても、新しい指標がいろいろ出てくる。家計部門の動向、あるいは物価をめぐる環境、今ご指摘された点も含め、これまで点検してきたさまざまな点をさらに見極めていくことが適当であると判断している」

何か特定の指標が出れば、特定の指標が強ければ、即、政策判断に結びつくということではない、ということを、もう少し市場関係者とわれわれとで理解を共有したいと思う。つまり、良い指標であれ、悪い指標であれ、将来の経済につながるインプリケーションは何か、既に持っている分析と合わせ、将来の経済のトレンドをしっかりつかみとっていく。それでなければ結論が出ない」

「したがって、消費者物価の数字的な伸び率がある程度下がった場合、このインプリケーションは、数字が下がったから、物価上昇率が低くなったから、利上げが遠のくのか。そんな単純なものではない。油の値段が上がったら経済が悪くなると心配する。油の値段が下がったらやはり心配するのか。そういうものではない。油が上がった場合でも、下がった場合でも、将来の経済にとっては、さまざまな角度から再構築してみないと本当の姿は分からない」

油の値段が下がれば、表面的な物価指数が下がっても、経済全体にとってはプラスの面が大きいかもしれない。そうすると、前向きの循環メカニズムが一層強く働くかもしれない。経済のバランスが一層良くなるかもしれないという面もある」

「しかし、そうではなくて、やはり人々の物価安定感が損なわれるというような物価の下がり方かどうか。いろいろな角度から点検しないと判断が出ない。1つの指標が強いからすわっ、弱いからすわっ、そういう行動を取られる方は自由だが、われわれはもう少しスクリーンにかけた上でのコミュニケーションを望んでいる」

――日銀が続けている低金利が市場のかく乱要因になっているとの認識はお持ちでないか。

「今のところ、日本経済の金利の水準については、表面的な比較では、世界各国と比べて非常に低い水準になっていると思うが、長年のデフレスパイラルに陥るリスクを危ぐしながら運営してきた経済であり、経済全体としても前向きのスタンスで経済運営ができるようになったまだ初期の段階だ」

「今の段階で、かなり緩和的な金融環境を金利水準の面から提供していることは、整合的なことではないか。したがって、将来の方向としては、これは緩やかに調整していくということであり、そのことを市場にも十分理解していただくということで、市場に対して今、格別、日本の金融政策がかく乱的な影響を及ぼしているとは認識していない」