能の作品のメインとなる部分を「曲」と書いて「クセ」と読みます。
 
「クセ」には、シテが動かず座ったままで地謡が物語を進行させる居曲(いぐせ)と、シテが立って舞う舞曲(まいぐせ)の二つがあります。
『玉葛』は通常は居曲ですが、明日は途中から立って舞う舞曲も取り入れる特別演出で勤めます。
 
『玉葛』のクセは、筑紫から舟に乗り都に逃げ戻った玉葛は、頼る者がいなく辛くなり、大和の初瀬寺へ参詣することにします。
 
♪年も経ぬ祈る契りや初瀬山♪
 
恋しい人に会えるように、と祈ってもご利益がないわ、と悲しんでいましたが、ここで右近と出会えたのは、やはり仏様のお導きですね、どうぞ玉葛を成仏させてください、と旅僧にお願いして、クセは終わります。
 
ご覧になる皆様は、シテが正面に座わりましたら、先ず場所は九州、そこから舟に乗って都まで移動している、とご想像されてご鑑賞ください。その後、シテは立ち上がり大和路を通り初瀬寺にお参りする様子を舞って見せ、最後は旅僧に近寄り玉葛の成仏を乞います。
 
能は難しい演劇です。
ご覧になる方にも、演じる方にも難しいです。
 
しかし、ご覧になる皆様は、個々にお好きなように場面を想像されましたら、決まりがない世界ですから、自由にお楽しみ頂けると思います。
「自分だけの想像の世界にひたる」
って最高でしょう!
 
但し、想像力は必須です。
 
そして演じる方も難しい演劇を
「難しい!」
だけで済ませられない状況になってきたように思います。
 
まず演者自身が、その難しさを可能な限り克服しなければいけないのではないか、と自分に言い聞かせて舞台に立っております。
 
緊急事態宣言が解除されまして、明日の喜多流自主公演はチケットの販売が可能となりました。
お時間ございましたら、喜多能楽堂へのご来場をお待ち申し上げております。