
能『楊貴妃』の初同(しょどう=最初に謡う同音)に
「げにや 六宮(りっきう)の粉黛(ふんたい)の 顔色のなきも理や」
があります。
大雑把に訳すと
「楊貴妃は唐の御所の奥御殿にたくさん住んでいられる后妃夫人の誰よりも美しい」
と、楊貴妃の美貌を褒め称えています。
この「りっきう」の謡を亡父菊生は
「りぃ、っきう」
と発音していました、今真似て謡っています。
玄宗皇帝は3000人の妃を500人づつ、六つの宮に分けて住まわせ、牛に乗り六宮の前を廻りながら、牛が止まった宮の妃を選んで、夜を共にした。
ある時から皇帝を乗せた牛が何故か同じ宮の前で止まるようになった。
何故?
答えは、皇帝にいつも来てほしいと思う人が、牛の好物の塩を宮の前にまいていたからだ。
今でも食事処の店先に塩を盛っているのは、そこから来ている。
と、小鼓方幸流の横山晴明先生が、お弟子様に話されていたのを聞いて、「これは覚えておこう」と思わずメモしたのは、今年の7月7日の事でした。
その横山晴明先生の訃報が昨晩届き、ショックで身体に力が入らないでいます。
横山先生は、小鼓の調子(音色)が良く、無駄な力が入らない掛け声、なによりも謡も手組も間違えない正確さは天下一、と私は思っていました。
あの面白いお話、能を勤める時にご相談することがもう出来ないのかと思うと、残念でたまりません。
祖父益二郎と亡父菊生の謡い方にこだわり、能とはなにか、能楽師の生き方、伝書の変体仮名の読み方
など、など色々たくさんの大事な事を教えて頂きまして、ありがとうございました。感謝感謝です。
本当にお世話になりました。
ここに謹んでご冥福をお祈り申し上げます。