
能は夢幻能と現在能に分けられ、夢幻能は死者、亡霊が旅僧や旅人の夢の中に現れ、前世での執心を愚痴り救済を求める。
現在能はその時に生きていた人々が登場して物語る作りとなっている。
今週の日曜日、喜多流自主公演で勤める『蟻通』は現在能である。
能のお話には、愚痴り救済を求めることが意外と多く『蟻通』のシテ(老人の宮人)も然りだ。
夜の雨の中、傘をさして松明を振りながら登場すると、蟻通神社が真っ暗で見えないのを嘆き、灯しの光も見えないし、祝詞をあげる声も聞こえない、神職達はなにをしているのだ! 怠慢だ!と怒る。
怠慢な神職の神域には神の力など降りて来ないぞ!と怒りをぶちまけ、愚痴る。
幕から出で来て、いきなり怒り出す老いた宮人だが、既に蟻通の神が憑依している、そう解釈して演じようと思っている。
渋く、決してわかりやすい能ではない『蟻通』だが、演者の心意気と解説で少しでも面白く鑑賞していただければ、と思って投稿した。
文責 粟谷明生