今年の夏は孫の相手をしながら滞在型resort Hotelのpoolsideでワインを傍らにイリイチの本を読み継いでいました〜♬
イヴァン-イリイチの思想は、孫たちと過ごした夏の思い出のような人類の懐かしき思い出に似ています。
イヴァン-イリイチの思想を一読して読む難しさは、ヴァナキュラーやオールタナティーヴ コンヴィヴィアル シャドーワークなど、独特の用語がキー🔑となって思想に嵌め込まれている点にあるような気がします〜♬つまりこれらの用語の彼固有の使い方を知らないと率直には頭の中に入ってこない面があるようです。
要は、国家や制度 システムを信頼しないと言う意味で広義の無政府主義者たちのグループに入れても良いのではないか と思います〜♬
また 商品の幻想的性格として有名になった かのマルクスによる使用価値と交換価値の分析を念頭に置きながら イリイチはものや物事の使用価値の復権と交換価値の流布と拡大に潜む人間性固有の価値と共同体の破壊の根源を見ているようです。市場主義を如何にコントロールするか？市場経済を全否定しないまでも如何にして我々のコントロール下に置くか？と言うのが彼の思想と行動の根本原理であるように思われました。
グローバル化の一途を辿る生産と消費の資本主義的循環を止めて 制限と制御を加えるーー時速20キロの思想と言う独特の考え方がイリイチにはありますがーー時速20キロの思想とは自転車で走る可動域の事ですが、これ以上になると「効率性」が優先され 交通手段を通じて「不平等」や「格差」の問題が生じてくる❣️とイリイチは言うのですがーーいわゆる広義の「道具」とは 人間の身の丈の寸法に合わせた五感的感性ーーヒューマンスケールが届く範囲に留められるべきーーと言う考え方ですね〜♬
つまり 効率性や生産性の向上 消費の拡大がある種の人間的感性の度合いを越えると 人間と対象的世界との関係が逆転し不自然な領域に追い込まれているにも関わらず、それを当然だと思い 格差や差別を自明視する社会が形成されてしまう とイリイチは考えているようですね。
論じる対象である道具が ものそのものであっても 或いは拡大して事的次元にある国家や政治のシステムーーいわゆるマルクスの上部構造であっても同様ですね〜♬
私は 何か彼の思想に特別新しいこととは感じませんでした。むしろ彼の特異で個性的な点は かかる夢のような思想を実際に彼が行動に移し実践したと言う点ーーつまり比類なき世紀の行動の人であったーーと言う点にあるような感想を持ちました〜♬
イリイチの考え方は夢かユートピアのようですが、近代国民国家以前の封建制や原始共同体に帰れ❣️と必ずしも言っているわけではありません。要はITの技術でも五感の延長の範囲を超えない使い方であればOKなのです。
更に注記するならば、そのイリイチ的五感のシステムが差別や不平等を生まないように工夫する と言う点が肝要でしょうか。国家と言う範疇そのものを否定するところまではマルクスに似ているのですが、人間の活動性や共同性の根源である経済的ものの考え方とと経済学そのものの優位性を転倒させること いわゆる思想史的パラダイムの変換ーーイリイチの用語を使えばオールタナティーヴにものを考える事が大事だと言うことですね〜〜♬
イヴァン-イリイチの思想は 人類の夢のような美しさが籠っていますが実現には種々の条件と困難を踏まえる事が予想されます。例え人類史的規模での実現は困難でも世界に一国でもかかる夢の実現が可能であるならばそれは素晴らしい事のように思われます。せめて一国或いは一共同体でも良いから世界史にかかる夢の実現体が存在することができたらそれは素晴らしい事なのです。かつて古代ギリシアにポリスと言う政治的且つ文化的な共同体が存在しましたが 成員一万人程度の地産地消型のポリスであれば 或いは可能か⁉️と思いました。
かつてローマに護民官と言う制度がありました。権力を民衆の側から監視し規制する制度ですが、同時にローマ共和制の優れた点は、権力を元老院と言う保守主義と伝統勢力の維持と保全を通じて、伝統の側からも二重に権力構造に規制を加えた点でしょうか。敢えて私見を言えば、僭越ですが、或いは中世史の専門家であるイリイチには後者の観点が微弱かーーつまり伝統制度と伝統権力を利用すると言う観点が、或いは抜けているようには感じました〜が！♬
補足：
伝統制度と権力にも利用できるものとそうでないものがある事はリアルポリティスクとして残念ながら弁えて置く必要はありますが。
後記：
なお本書はイヴァン-イリイチが1981年に 招きに応じて来日した一ヶ月ほどの滞在期間中に、我が国の先進的知識人たちや行政 市民たちと接した体験を元に対話形式で纏められたものです。
世紀の語り手イリイチは短い滞在期間を最大限に利用して 沖縄と水俣を訪れて積極的に語りかけていたようです。イヴァン-イリイチには何処かソクラテスかカンディーのようなところがあって 書かれた言語 つまり書記性言語(注-1)では語り切り伝えきリ尽くせない面があったようです。それでも彼は敢えて語りました。人間の希望のために❣️日本の希望のために❣️
パンプレットのようにミニサイズの本書は、その思い出の断片と破片 破片と波紋の行方が描く人類の記憶の輝き 滔々と流れ去る人類の想い出の煌めき と言っても良いでしょうか。
イヴァン-イリイチさんは2002年12月に亡くなられました。
※ (注-1)
書記性言語を用いて語り思考するとは なにがしか権力側の言語を用い体制側に加担すると言う呵責なき自己認識の厳しさが温和な風貌にも関わらずイヴァン-イリイチにはあるようです。
資料として：
本書表紙の裏側にあるイヴァン-イリイチ氏の略歴です。
同じく裏表紙の裏側にある本書の紹介文です。
本書に関わられた日本側のメンバーです。
本書の目次になります。
成田も自主講座も遥か昔の出来事になってしまいました。
