イメージ 1


 ジェズ教会の前のカフェで一服し、そこから北に折れて、いわゆる「ヴェッキア・ローマ」、コルソ通りの西側に開ける地区をそうのように言い慣わしているそうですが、サンタンドレア・デッラ・ヴァッレ教会のドームで方位を確認しながら、最もローマらしい旧市街の路地にに入っていきます。

イメージ 2



イメージ 3


いちおう、その日の時間を考えてその北限として
サン・ティニャツィオ広場まで歩きます。
ローマの古代風の、風格を帯びた広場とは
違った、ロココ風の広場です。まるで舞台の書割のようだとも云われ、モーツァルトの軽妙なオペラが野外で演じられても不自然な感じではないでしょう。



イメージ 10



イメージ 12



イメージ 11


 サンティニャツィオ広場に面した同名の教会を参拝していきます。この教会は聖イグナティウス・ロヨラに奉げられた教会とありますから、先のジェズ教会ととても似た雰囲気が感じられます。
 またこの教会は隣接するイエズス会旧ローマ学寮ともつながっています。ジェズ教会を中心としたこのあたりはイエズス会修道士の教育養成の拠点であったことも分かります。

イメージ 13




イメージ 4



イメージ 5



イメージ 6


 ローマの町は町自体が古いのですが、その中でも特に風格のある古い町並みをヴェッキア・ローマと読んでいます。そのヴェッキア・ローマよりも古い歴史的地層がローマの建造物の遺構です。歴史的建造物の遺構をファサードとして残し、内部は機能的な空間として改装する、そうした最近の日本でも見られるような再利用の方法がローマでは昔から確立していたようです。
 ハドリアヌス帝の神殿の遺構とピエトラ広場が持つ独特の雰囲気についてはスタンダールも『ローマ散策』のなかで触れています。

イメージ 7



イメージ 8


ヴェッキア・ローマに黄昏の時刻が訪れます。


イメージ 9


イメージ 14


パンティオンの傍らを通り過ぎます。


イメージ 15


カフェ・サンテウスタキオでエスプレッソを
立ち飲みします。


イメージ 16



イメージ 17



イメージ 18



イメージ 19

 カンポ・ディ・フィオーリ広場に至るこのあたりは軒並みに、若い人向きの店のショウウィンドーが夜になると照明を輝かせて華やかな雰囲気を醸し出します。


イメージ 20



イメージ 21

 ローマの市民には知られているこの広場も、観光の通りすがりのものの眼には特別のものがあるわけではなく、日曜日などに開かれるメルカートの露店や花市場を巡り歩くそぞろ歩きを除いては特段興味を引くところではないだろう。しかしローマの町では、夜の帳がとっぷりと暮れるころ、なにがあると云うわけでもなくそぞろ歩きの市民たちが、ここだけではなく集まってくる。
わたくしは人間の孤独と云うことについて考える。当たり前のことだが、人間は孤独である。そんな当たり前の確認するためにローマに住む人々は日が暮れるころ光を懐かしんで広場に集まる。孤独であるとは、人間が限りある存在であると云うことである。その限りある存在と云う考え方が、無限なる存在者としての神と云う概念から自然と、無意識のうちに前提とされ、それが彼らの生き方を規定する。神を持たないわたくし達日本の民族は同時に、無限なるものと云う概念も真の意味では不在で、そこから地上にあるものの絶対視と云う見方が生まれる。孤独であることが何か恥ずかしいことでもあるかのような国民性が醸成される。無限なるものの不在は、個的な実存と云う自分自身と直面する動機を永遠に欠落させる。神概念や無限なるものに対峙する実存のあり方を知らないことはそれでよいとしても、在来より伝統とか因習、年功序列や独特の身分制度が陳腐化していく中で、日本人の国民性のなかから孤独と直面させることを隔ててきた様々な障壁や諸権威の失落は、欧米人とは違った意味での神や無限なるものとの実存的対峙と云う新しき人類の経験に日本人を直面させることになるだろう。日本の老人を見舞う孤独と云う問題が関わってくる。


イメージ 22



イメージ 23


ローマの最後の夜は、ファルネーゼ宮の上昇った月が美しい。ファルネーゼ宮は現在フランス大使館になっている由であるから一般の参観はできない。それでもオペラ『トスカ』の世界の最後の遺構を訪れたいと云う動意は大きく、最後の日に訪れた。
ガラス窓越しに、ズームレンズで二階の吹き抜け部を除くと、薄っすらと歴史画を描いたと思われる絵画を認めることができた。

イメージ 24



イメージ 25



イメージ 26


ファルネーゼ宮の背後の、テヴェレ川に至る細長い地区は人通りも全く途絶えて犯罪が起きてもおかしくないような雰囲気である。

イメージ 27



イメージ 28



イメージ 29



イメージ 30



イメージ 31


橋を渡ると夜間照明されたサンピエトロ寺院の
クーポラを望むことができた。


イメージ 32



イメージ 33


ヴェネツィア広場でバスに乗り換えて、車窓を夜間照明されたトラヤヌスの記念柱が過ぎていく。



イメージ 34


 なおもローマへの名残は強気く、テルミニの終点までは乗らずに、途中の共和国広場近くで降りて、エスクリリーノ広場にある宿まで歩いて帰ることにした。途中にある、人通りの全く途絶えたローマ歌劇場の前の広場で休憩を入れる。


イメージ 35


最初の頃未知なるローマを歩いて位置情報を確認したサンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂のクーポラが青みを帯びた照明に、夜空に輝いている。


イメージ 36



イメージ 37